社説/骨太の方針(2)価格転嫁交渉「団体協約」活用を

(2024/6/18 05:00)

政府は「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案で「政策を総動員して賃上げを後押しする」と表明した。懸案の価格転嫁問題では、中小企業が団体で親企業と取引条件を決める団体協約の制度周知に取り組む。三位一体の労働市場改革ではリスキリング(学び直し)の対象に経営者も加え、収益力強化を賃上げにつなげる。これら対策が、物価と賃金の好循環をもたらすと期待したい。

政府による賃上げ促進策の王道は、企業に成長分野への国内投資を促し、稼ぐ力を向上させることだ。だが、それだけでは十分ではない。骨太の方針(原案)には、これまでとは異なる労働市場改革や価格転嫁対策の視点が盛り込まれたと評価できる。労働市場改革は国民会議の開催も検討する。国民運動の展開で改革を加速してほしい。

価格転嫁対策では、中小企業等協同組合法に基づく団体協約の活用を促す。親企業と中小企業の協同組合が団体協約を締結し、中小が団体で価格交渉に臨む枠組みだ。政府は制度の活用実態を調査し、各組合への制度周知を進める。中小企業が価格転嫁に向け、自社のコスト構造を可視化しているかも2024年度中に実態調査する。これらの対策を取引適正化につなげて賃上げの裾野を拡大したい。

政府は30年代半ばまでに時給1500円を目指す最低賃金のより早い達成を目指すことも骨太の方針に盛り込む。この実現に向けても、価格転嫁の問題は早期に解消する必要がある。

労働市場改革のうちリスキリングは、教育訓練給付率を最大70%から80%に引き上げ、教育訓練休暇中の生活を支える新たな給付金も創設する。スキル向上に伴う賃上げはもとより、従業員がより高水準の成長分野に転職する効果が期待される。

注目されるのは、経営者もリスキリングの対象に加わることだ。大学と業界が連携し、最先端の知識や戦略的思考を身に付ける教育プログラムを創設し、25年度に約3000人の参加を目指す。経営者の能力を高めることで収益力が向上し、賃上げにつながるか注視したい。

(2024/6/18 05:00)

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