(2024/6/19 05:00)
政府は次世代半導体の量産を支援する法整備を検討する。ラピダスを念頭に、量産に必要な資金を円滑に調達できるよう、同社への融資に政府保証を付ける案が浮上している。補助金に依存せず、資金を安定確保できる利点がある。だが返済困難な場合は政府が肩代わりするリスクがある。政府は、半導体の競争力強化と財政規律の両立に向けた議論を深めてもらいたい。
政府は月内にまとめる「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に、次世代半導体の量産に向け「必要な法制上の措置」を検討すると盛り込む方針だ。次世代半導体の国産化は人工知能(AI)や自動運転などの成長分野を支える。ラピダスの資金調達を後押しすることは、ラストチャンスとされる日本の半導体復権につながる。
ラピダスは2027年に回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)の次世代半導体を北海道で量産する。政府は最大9200億円の補助金を決めたが、量産には5兆円規模が必要という。生産実績がない同社への巨額融資は難しいとみられ、政府はラピダスへの融資に政府保証を付ける支援策を視野に入れる。補助金の支出が抑えられる半面、返済困難な場合は最終的に国民負担となることに留意したい。
肝心なのはラピダスの事業が軌道に乗るかだ。台湾積体電路製造(TSMC)やサムスン電子も2ナノ半導体の量産を目指しており、製造コストや顧客獲得の競争で不安も残る。政府が過去に関与した半導体産業支援は迅速に意志決定できずに失敗した苦い経験がある。ラピダスは米IBMと共同で競争力のある量産技術を確立し、政府保証がなくても融資を受けられる信頼を早期に獲得してもらいたい。
政府は21―23年度の3年で、ラピダスやTSMC熊本工場などに計4兆円の半導体支援予算を措置した。予算を戦略分野に重点配分するのは適切な措置だが、他の予算を抑制するなど歳出にメリハリを付け、財政規律に配慮する必要がある。政府は骨太方針の原案で中長期の財政健全化目標を示しておらず、この議論こそ先行してほしい。
(2024/6/19 05:00)
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