社説/きょう「最低賃金」審議開始 増額期待も「支払い能力」配慮を

(2024/6/25 05:00)

2024年度の「最低賃金」の審議が25日から始まる。好調に推移している24年春季労使交渉(春闘)も参考にするため、過去最高だった23年度を上回る額が期待される。一方、中小企業の支払い能力には十分に配慮し、「金額ありき」でない審議を求める。持続的な賃上げに向け、中小企業の「稼ぐ力」を強化する施策こそ急ぎたい。

最低賃金は、中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)が例年7月中に「目安」の額を示し、各都道府県の審議会が目安に基づいて決定する。23年度の全国加重平均は前年度比43円増の時給1004円で、初めて1000円を突破した。岸田文雄首相は30年代半ばまでに同1500円の目標を掲げる。23年度並みの高い伸び率を継続する必要があり、中小企業の賃上げが息切れすれば達成できない。

日本の平均給与は、経済協力開発機構(OECD)に加盟する38カ国中で25位(22年)にとどまる。国際的に見劣りする賃金の底上げと、地域間の賃金格差を是正したい。雇用の4割を占める非正規の処遇改善と同時に、外国人労働者に選ばれる日本にする上でも、最低賃金の引き上げを進める必要がある。

他方、最低賃金の審議では、中小企業の支払い能力にも目配りしてもらいたい。日本商工会議所など中小4団体は4月、最低賃金に関する政府への要望を発表し、中小企業の経営や地域経済の実態を踏まえた審議を求めた。最低賃金は赤字企業にも適用されるだけに、額ありきでない丁寧な審議を求めたい。

中小企業の人材確保を狙った無理な「防衛的賃上げ」には限界がある。約34年ぶりの円安による輸入物価の高止まりが、中小企業の経営を圧迫する。「金利のある世界」となれば収益はさらに厳しくなる。政府が閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」では、円滑な価格転嫁をはじめ、中小企業の生産性向上やM&A(合併・買収)・グループ化を促す支援策が講じられる。中小企業は政府支援も受けつつ事業再生に動き、持続的な賃上げが可能な収益基盤を獲得したい。

(2024/6/25 05:00)

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