(2024/7/18 05:00)
「従業員30人以上」の事業者に限れば、5月の定期給与の伸び率が26カ月ぶりに物価上昇率を上回った。だが該当する事業者数は全事業者の7%弱に過ぎず、従業員数も全事業者の5割強。残る多数の「従業員30人未満」の中小・小規模事業者にまで、賃上げの勢いが波及しているかが気がかりだ。22業種の業界団体が価格転嫁をめぐる自主行動計画を策定した。最低賃金の議論も見据え、各業界はサプライチェーン(供給網)の“果実”を適切に分配してほしい。
厚生労働省によると、「従業員30人以上」の事業者による5月の定期給与は前年同月比3・5%増(速報値)と、同月の消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く)の上昇率3・3%を上回った。一方、「同5人以上」を対象とする同月の毎月勤労統計調査(速報)では、実質賃金が同1・4%減と26カ月連続で前年比マイナスだった。
「同5人以上」の調査は定期給与に賞与なども含んでいるため、「同30人以上」のデータと一概に比較できないが、規模が小さい事業者ほど賃金が伸び悩んでいる状況を伺わせる。
日本はこの中小・小規模事業者が多い。総務省と経済産業省が2022年6月にまとめた調査によると、従業員5人未満の事業者数は全体の56%、30人未満は93%に達する。全事業所に占める従業員数も順に10・5%、46・6%と少なからぬ割合を占める。中小企業の労働分配率は7割程度、大手企業は4割程度とされ、そもそも中小企業の賃上げ余力は少ない。こうした事業者が賃上げ分を取引価格に円滑に転嫁できるよう、親企業の理解と協力が求められる。
公正取引委員会が23年11月に示した価格交渉に関する指針に基づき、22業種の業界団体が自主行動計画を策定した。指針にあるように、発注者は受注者からの要請がなくても積極的に価格転嫁に向けた協議の場を設けてほしい。経営が陣頭に立ち、主体性をもって取り組む必要がある。中小・小規模事業者は24年度の最低賃金も増額が想定される。取引適正化を進め、産業全体で賃金を底上げしたい。
(2024/7/18 05:00)
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