社説/官と民の関わり方(2)政府主導で「脱炭素電源」拡充を

(2024/8/14 05:00)

電力事業は、これまで以上に政府の主導力が求められる。電力需要増に対応する安定供給と低廉、そして環境対応への道筋を付ける必要がある。政府は電源構成の最適解を見いだし、産業競争力の強化につなげたい。原子力発電所の再稼働も政府が前面に立ち、地元理解を醸成する実行力を発揮してほしい。

政府は2024年度中に「第7次エネルギー基本計画」をまとめる。生成人工知能(AI)の普及などで電力消費の急増が見込まれる中、環境と両立する「脱炭素電源」の拡充を打ち出す方針だ。再生可能エネルギーを主力電源化しつつ、ベースロード電源(低コストで安定供給できる電源)となる原子力を最大限活用する必要がある。原子力の再稼働など、今ある設備・技術を総動員し、エネルギーのベストミックスを模索したい。

だが現行の第6次エネ計画では、電源構成を30年度に原子力20―22%、再生エネ36―38%と想定するものの、22年度実績はそれぞれ5・5%、21・7%にとどまる。目標達成への道のりは遠いと言わざるを得ない。

東京電力柏崎刈羽原発7号機は地元同意の見通しが立たず、再生エネも発電量と使用量を均衡させる出力制御の課題を抱える。原子力は、政府による安全・安心の丁寧な説明や粘り強い地元への説得が求められる。避難路の整備も国費で行いたい。

他方、原発の新増設を促すため、建設費などを電気料金に上乗せする案が政府内で浮上している。国民負担がどの程度増えるのか、原子力事業者の事故時の賠償責任に限度額を設けない「国策民営」のあり方などについて議論を深めてもらいたい。

再生エネは、曲がる太陽電池「ペロブスカイト」や浮体式洋上風力発電などへの政府支援とともに、蓄電池の拡充が求められる。石炭火力発電へのアンモニア混焼なども期待される。

電源のベストミックスは、官が大きな絵を描き、民がそれぞれの役割をしっかり果たすことで実現しよう。政府の主導によりエネルギー安全保障を揺るぎないものにし、経済・社会の発展につなげてもらいたい。

(2024/8/14 05:00)

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