リヨンで輝く 技能五輪国際大会(6)トヨタ自動車・小石嵩陽選手

(2024/8/28 05:00)

強みは対応力、臆せず挑む

  • 車に触れることはうれしい…と小石選手

「大会で出てくる選手の中で1番の車好きだと思う」―。自動車への愛を力に変えて「自動車板金」に挑むのはトヨタ自動車の小石嵩陽選手。自動車板金はこれまで国内大会、国際大会ともにトヨタが得意としてきた職種の一つ。プレッシャーは重くのしかかるが、磨いてきた技術と情熱で跳ね返し、2大会連続の金メダルを狙う。

子どもの頃から工作やモノづくりに興味を持っていた小石選手。特に「物心ついたときには父親の影響で車が好きになっていた」と話すなど、根っからの車好き。「買ってもらったラジコン(無線操縦の模型自動車)を分解して怒られたこともあった」と幼少期から技術者としての片りんをみせていた。中学生ではロボットコンテストに出場し、九州地区の大会で3位になったこともあるという。

その後、トヨタ工業学園高等部に進学し、本格的に技能五輪を意識し始めた。クラブ活動は技能五輪の課題などを行う「モノづくり部」に所属し、腕を磨いた。2023年の第61回技能五輪全国大会で金メダルを獲得し、国際大会への切符を手に入れた。

  • 自動車板金の国際大会は“町の板金屋”の仕事そのもの

自動車板金において国内大会と国際大会は大きな違いがある。国内大会は1枚の鉄板をハンマーで伸ばしたり、曲げたりしながら指定されたモノをつくり上げる内容だが、国際大会は“町の板金屋”の仕事そのもの。全体で20―22時間の作業が4日間に分かれており、バンパーの歪みの修復、フレームの交換などを行う。「大会によって車種や課題は違うが、全国とは内容やボリュームがケタ違い」(小石選手)と話す。ただ、小石選手は車好き。「車に触れることはうれしい。技能五輪を始めた時から全国大会より、国際大会を目標にしていた」と臆していない。

「強みの一つは対応力」と評価するのは指導員でトヨタ技能者養成所技能五輪課の加藤宏基さん。「実際の競技では全部がうまくいくことはない。不測の事態が発生したときに冷静に対処できるかがメダルの色や点数を分ける」と指摘。「(小石選手は)トラブルを難なくこなす」と期待をかける。

近年、力を付けてきている中国や、自国大会で息巻くフランスをライバルに挙げる。ただ「海外の選手との国際交流も楽しみ」(小石選手)と笑顔も見せる。目標は金メダル。「勝って持ち帰りたい」と意欲は十分だ。(名古屋・川口拓洋)

【自動車板金】 自動車の“修理”をベースに競技が構成されている。例えば、自動車の骨格部分であるフレームの交換や衝撃から守る部品であるバンパーの修理、傷やへこみをハンマーで元の形状に修復する板金などを決められた時間内で実施する。グラインダーなどエア工具や、スポット溶接機などを駆使する必要もある。1枚の鉄板からハンマーで指定された形状に仕上げる国内大会とは一線を画す内容で、国際大会は自動車の整備という現実の課題に沿った種目となっている。

(2024/8/28 05:00)

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