インタビュー/NTTフェロー・岡本龍明氏 「研究、内なる好奇心が原点」

(2024/9/3 12:00)

NTT社会情報研究所の岡本龍明フェローは、暗号理論の専門家として数々の賞を受賞してきた。研究にかける熱意や暗号理論への思いを聞いた。

―暗号理論の研究を始めたきっかけは。

「1978年に日本電信電話公社(現NTT)に入社後、日本版コンピューターネットワークを作るプロジェクトに入った。現在のインターネットを見越した先見性のあるプロジェクトで、仕事の基礎を学んだ。その後、ネットワークセキュリティーへの機運が当社で高まり、80年代半ばに暗号研究を始めた」

―35年以上暗号研究に取り組んでいます。

「インターネット利用時は、必ず裏で暗号を使っている。90年代のインターネットの普及で暗号も一気に普及した。90年代後半のITバブルでは電子マネーがブームになった。私自身も先駆的に80年代から電子マネーの研究に取り組んだ。09年に誕生した(仮想通貨の)ビットコインにも我々の知見が生かされていると感じている」

―情報の真実性を証明しながら、詳細は秘密を保つ暗号技術「ゼロ知識証明」の研究に尽力しました。

「パスワードを入力して送信したことを証明する場合、パスワード自身をそのまま送ると危険性がある。パスワードを知っているという事実だけを証明すればパスワードを相手に見せなくても利用者が送信したことを証明できる。理論の遊びのように思ったことが30年という時間をかけてビットコインやブロックチェーン(分散型台帳)で実用化された。非常に面白い分野で興味は尽きない」

―米国の研究所所長を経て武蔵野研究開発センタで研究を続けています。

「世界有数の研究者を集めた暗号理論研究所ができた。2年前に帰国し、20歳以上若い研究者とともにゼロ知識証明の研究を続けている。理論を極めたいという内なる好奇心が原点。研究者として年齢は関係ない」

(2024/9/3 12:00)

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