インタビュー/JALエンジニアリング・樋田典昭氏 マニュアルにない工夫 正確さ磨く

(2024/9/10 12:00)

JALエンジニアリングの樋田典昭氏はエンジン整備の達人で、2020年の定年まで同社の整備士の中で最上級の「トップマイスター」を務めた。安全運航を支える仕事の極意を聞いた。

―飛行機は座席スペースが広くなるなど、より快適に進化しています。整備の業務はどう変わっていますか。

「飛行機が進化しても、整備は人の手なくしてはできない。限られた場所に多くの部品や配線などが複雑に配置され、難易度は上がっている。ある時は、ネジをつまんだ状態の手さえ差し込めないほど狭い隙間だったため、接着剤で指先にネジをくっつけて手を差し込んで取り付けたこともある。マニュアルにない工夫も必要だ」

―若手時代は技能をどう磨きましたか。

「最初は何もさせてもらえず、作業する先輩の手元を懐中電灯で照らし、工具を手渡すのだが、間違うと後ろに工具を放られた。少し経験を積んで先輩と役割を交代した時、作業が遅いと先輩はいなくなるため、懐中電灯を口にくわえて作業した。そんな中で速さや正確さなどを磨いた」

―今の若手教育は。

「昔とは全く違い、まずは褒めるようにしている。一方、皆マニュアルで勉強しているが、今は日常生活での経験が少なく、昔は皆が知っていたネジを締める方向を知らない若手もいる。教え方は難しい。マイスター時代は、他のマイスターとともにマニュアルには載っていない現場で必要な知識を教える活動も行った」

―整備士に必要な心構えは。

「一等航空整備士を取得後、飛行機の出発了承を確認するライン確認主任者の社内資格を取った時、先輩から『自分の身内が乗ってると思ってサインしろ』と言われた。先輩がとても格好よく、肝に銘じている。大きなトラブルを見つけて大変な対応もたくさんあったが、『トラブルを見つけるスキルが重要』とも言われた。整備士に必要なのは健康と積極性、素直な心だ。若手にはお客さまが乗ることをイメージし、仕事をしてほしい」

―モチベーションの源は。

「何事も自然体で接したいと考えている。仕事をし、趣味も楽しむ。うまくバランスを取っていきたい」

(2024/9/10 12:00)

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