(2024/9/13 12:00)
多摩川精機(長野県飯田市、松尾忠則社長)は高精度センサーや各種モーター、制御システムなどを取り扱う。1938年の創立当初に手がけた航空計器から技術を磨き続け、80年代からは宇宙関連事業に参画。人工衛星やロケットに同社製品が採用されている。
多摩川精機は巻き線技術を活用した角度変位センサー「レゾルバ」などを製造する。86年に試験機打ち上げに成功した宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構〈JAXA〉)が手がける国産ロケット「H1ロケット」に同社製センサーが搭載され、宇宙事業に参画を果たした。コンポーネントに特化し、人工衛星に搭載する角度センサーを含む機器を約500台納入した実績を持つ。
2024年7月1日に打ち上げられたJAXAの大型基幹ロケット「H3」3号機が搭載した地球観測衛星「だいち4号」の合成開口レーダーにも同社製のアクチュエーターが3台採用された。同レーダーは電波を地表面に照射し、地表面が反射した電波を受信して情報を得る。観測時に太陽光が必要ない。アクチュエーターはセンサーのアンテナを展開・保持する機構に使用されている。
宇宙で運用する製品には定められた規格があり、取引する企業にもそれぞれが定めるレギュレーション(規則)がある。それらをクリアするために、品質やシステムも整えながら技術の向上を続けている。ハンダ付けを学ぶために米国に技術者を派遣したこともある。
宇宙分野における多摩川精機の強みは、約40年間の積み重ねで得た技術とノウハウ。それらに裏打ちされた顧客の要望への対応力の高さだ。大手企業には難しい、迅速な開発方針の変更なども可能だ。松尾社長は「この業界に携わることへの覚悟を持っている」と宇宙事業への姿勢を示す。コンポーネントやコア技術は宇宙だけでなく、航空や自動車などの幅広い分野で採用されており、自社の持つ技術の横展開も、強みの一つだという。
松尾社長は航空・宇宙の分野に携わるメリットに商品寿命の長さを挙げる。自動車と比べて航空機はモデルイヤーが長く、製品も生産ラインに一度乗せることができれば長期的な納品につながる。初期の開発コストはかかるが採算も取ることができる。加えて修理・整備(MRO)の仕事もあるため、さらなる売り上げを見込むことも可能だ。一方、そこに至るまでの実績を作る難しさがあり、「航空の分野においても約20年の積み重ねがある」(松尾社長)と話す。
同社では宇宙に携わる事業をさまざまな技術への挑戦の場と捉え、「先鋭的な技術を使い、試し、実装できる。クラフトマン(職人)からすると楽しい分野」(同)と魅力を語る。電動化などにより消費エネルギーを削減した飛行機の開発にも関わる。より遠く、より速く移動する手段として「飛行機」はこれからも必要とし、高度化するニーズに応え続ける。
(2024/9/13 12:00)
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