(2024/9/13 12:00)
―著書『湖池屋の流儀』を出版したきっかけは。
「キリングループに勤めていた頃に知り合った出版社の人に声をかけてもらったことが大きい。当初はキリンでの軌跡を書こうと思ったが、その人から『湖池屋でも、キリンと同じく、いろんなサプライズなどを仕掛けて結果を残しているんだから、それを書いてほしい』と言われ、方針を変えた」。
―本を通して一番伝えたいことは。
「モノづくりを通して人を楽しませることは、モノづくりの得意な日本人にとって、大きな喜びだということだ。失われた30年などと言われて日本人は自信をなくしているが、モノづくりにおいて、何度失敗してもいいからビビらずに挑戦をしてほしい。今、モノづくりに携わっている人の背中を押せればうれしい。中学生にもモノづくりに興味に持ってもらえるように、ポテトチップスの市場の仕組みや、モノづくりをする上で重要となるその時代の気分に関すること、モノづくりでこだわりを持つことの大事さなどを、分かりやすい言葉でつづるように心がけた」
―湖池屋の企業風土をどう感じましたか。
「湖池屋は日本で初めてポテトチップスを量産化したり、コーンスナックや辛いスナックを作るなど独自性が高いものの、後発社に仕掛けられた価格競争についていってしまい、ユニークさがなりを潜めてしまっている会社だと感じた。だからこそ、社長就任からずっと、何が強みで、お客さまからどんなことを期待されているかを考えようと呼びかけてきた。創業者は天ぷらを揚げるようなチップス作り、のり塩などの味付けなど工夫して、日本人の舌に合うものを作ろうという信念を持って、それを徹底した。さらに、私がキリン時代に取り組んだ『FIRE』や『生茶』のように、製品を開発し、世の中のニーズをマーケティングして、いい製品を販売するという連続攻撃を勢いよく続けるよう、組織を鼓舞した。今では、プライドポテト、ピュアポテトなど、お客さまから支持されている製品が生まれている」
―ライバル社はコストの縮小・削減に力を入れ、安売り合戦に巻き込まれました。
「安売りに巻き込まれると大資本のほうに強みがある。(湖池屋は)その対極に立つ必要があると考えた。ファンがどんなこだわりを持っているかを推測しながら、一品一品こだわって製品を作っていった。プライドポテトも、そういう思想で作った品だ」
―大本に立ち返らないと未来は見えない、三方よしなど、日本企業の昔ながらの考え方に立脚しています。
「モノづくりをするには文化が必要で、その文化を商品に投入するのが湖池屋流だ。大事なのは、創業者が何を考えて企業化したかに思いをはせること。そこをリブランディングした」
―喜んでもらう製品作りに必要なものは。
「意外感だ。ニーズに応えただけでは、『ふーん』という反応しか得られない。『そうきたか』を出すから手に取ってもらえる。だからセレンディピティー(偶然の発見)をものにする力を付ける必要がある」
(2024/9/13 12:00)
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