社説/米国「軟着陸」期待 日銀は内外経済見極め正常化を

(2024/10/9 05:00)

米国経済が“軟着陸”に向かうか注視したい。雇用情勢が堅調な米国は、インフレを抑えつつ景気を支える軟着陸が想定され、大幅な利下げ観測が急速に後退している。米国の軟着陸への確度が高まれば、日銀は追加利上げに動きやすくなる。足元の為替相場は、日本の物価を高止まりさせる円安基調にある。日銀は内外の金融市場と経済を慎重に見極め、金融政策正常化への歩みを進めてもらいたい。

米連邦準備制度理事会(FRB)が9月に政策金利を約4年半ぶりに引き下げたことで、日銀には政策判断の「時間的な余裕」が生まれるはずだった。米国の利下げで過度な円安が修正され、日銀は慌てて物価抑制の利上げに動く必要はないとみられていた。だが、状況が変わりつつあることに留意したい。

米FRBは、米国経済の先行き不安から大幅利下げに転じたものの、9月の米雇用統計は市場予想を上回って堅調だった。非農業部門の就業者数は前月比で25・4万人増え、市場予測はこれより10万人以上も少ない14万人増だった。金融市場では、米FRBが11月に0・5%の大幅利下げに動くとの観測が急速に後退し、7日(現地時間)の米国10年物国債利回りは約2カ月ぶりに4%を上回っていた。

日銀の利上げは米国経済の軟着陸を前提としており、追加利上げに動きやすい環境が整いつつある。9日の国内債券市場は日銀の追加利上げを見通し、上昇の動きがみられた。米国は10日に9月の消費者物価指数を発表する予定であり、インフレ抑制と雇用改善を両立する軟着陸に向かっているか確認したい。

8日の東京外国為替市場の円相場は1ドル=147―148円台で推移し、前日よりやや円高で推移した。中東情勢の悪化などを懸念したドル売りだが、それでも多くの日本企業の想定為替レートより円安水準にある。

円安は輸入物価の高止まりにつながり、個人消費の回復を遅らせかねない。石破政権は衆院選後に講じる経済対策(物価高対策)に加え、日銀の独立性を尊重し適切に金融政策を推し進めることも強く求められる。

(2024/10/9 05:00)

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