(2024/10/9 12:00)
セイコーエプソンのフィリピン工場(リパ市)は、プリンターやプロジェクターなどの組み立てを手がける主力拠点だ。プリントヘッドやカートリッジといった要素部品を生産する他工場では自動化が進む一方、組み立てを担うフィリピン工場は労働集約型。場内物流の機械化や人材管理の電子化を進め、生産性向上に取り組む。生産面ではモデルラインを構築し、単純作業の自動化も推進している。
「工場全体を一つの流れと捉えて、ラインや場内物流の自動化、人の管理もスマートファクトリー化させている」。生産企画本部長の武井昭文執行役員は、フィリピン工場の取り組みについてこう説明する。同工場の増設計画に伴い設計段階から自動化を見据え、2013年ごろに取り組み始めた。
プリンター工場内の物流では、組み立てに必要な部品の受け入れ作業で無線識別(RFID)を活用している。納入した部品を倉庫からラインまで運搬するベルトコンベヤーを24年4月に稼働し、どの部品がどれだけ使われたかを自動集計して倉庫に配送指示を出すようシステム化。組み立て終えた完成品も、従来はパレットに積んで人が運んでいたが、ベルトコンベヤーで自動化している。
こうした取り組みで従来よりも3割程度の物流人員削減につながった。今後は部品を運んできたトラックから直接ラインへの運搬につなげる自動化も構想しており、倉庫レスを目指す。
健康状態の申告や休務申請などを行える管理システムも開発した。コロナ禍をきっかけに、毎日従業員の健康状態を把握する必要が出てきたため「そこを逆手に取った」(武井執行役員)形だ。パソコンを持たない現場作業員が入力できるよう、使いやすさや色、形、大きさにこだわり、工場内に60台設置。従来の紙での管理を電子化し、2万人近い従業員の労務状況管理を担う人事・総務部門の業務効率化も実現した。
23年に立ち上げたプリンターのモデルラインでは、ネジ締めといった単純作業工程、完成品の外観・機能の検査工程、梱包工程で自社の水平多関節(スカラ)や6軸のロボットなどを活用。6割ほどの作業を自動化できており、工場内での横展開や残りの4割の工程で自動化をさらに深化させる。
要素部品を手がける秋田県や山形県の工場は生産ラインの自動化が進んでおり、設備のメンテナンスなどの効率化を研究中。将来は海外工場への展開も視野に入れる。
(2024/10/9 12:00)
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