(2024/10/11 12:00)
―執筆の背景は。
「日本のエンジニアを取り巻く環境を、なんとかしないといけないという使命感があった。特に本を執筆した当時は、ITやテクノロジーでは日本は後塵を拝していた。エンジニアという仕事は海外では花形である一方で、日本ではエンジニアの給与は高くなく、生涯のキャリアパスが明確ではなかった。加えて、多重下請け構造のため、中小や零細企業に属するエンジニアは給料が上がりにくい。上からの指示を受けるだけの構造では、エンジニアが創造性を発揮できる場所がない。主体的にテクノロジーを活用して新たな価値を生み出し、日本がもう一度、脚光を浴びてほしいという思いがあった」
―『「技術バカ」に未来はない!』という見出しが特徴的です。
「新たな技術を習得し続ける本物の『技術バカ』は素晴らしいと思う。ただ、本物の技術バカはそこまで多くない。作業として仕事をしているような『技術バカ風』の人に対する啓発の意味を込めた。エンジニアといえども組織人だ。例えばリーダーシップや社内を巻き込む力など総合力を持つことで、影響力がある仕事ができる」
「技術バカという表現に対しては共感も得られたが、反発もあった。ただ狙い通りだ。技術を徹底して追求するよりも総合力を高めるほうが簡単で、結果、将来的なキャリアパスにもつながると考える。技術バカと表現したのは、技術を持っていると勘違いしている人がだめになっていく姿が見えたからだ」
―総合力を高めるために必要な心がけは。
「自分の幸せを第一に考えながら、組織第一主義の考え方を持つことだ。組織第一主義とは、全体最適を目指せということだ。自分の周りだけよければよいといった部分最適ではなく、チームが勝たないと意味がない。自分の技術や能力をチームが勝つために使い、皆が喜べて、初めて発展的な未来がつかめると思う。これを理解しないエンジニアが多かった。全体最適には自制心や克己心が必要だ。全体最適を考えることで自分自身の発言に力が宿り、リーダーシップを執ることにもつながる」
―強い組織をつくりたいなら、終身雇用を本気で目指せ、という一文が印象的です。
「基本の価値観は今も変わっていない。素晴らしいサービスは作り上げるのに時間がかかるし、よいサービスは共通の認識を持った仲間でなければ提供できないだろう。執筆当時は簡単に転職してしまうエンジニアが増えてきた時期だったた。転々とするのではなく、気心知れた仲間と仕事をした方がよいのではないか。社会的な信用といった観点からも、可能であれば同じ会社で仕事を続けた方がよいだろう。当社に入社する人に対しても、ずっと一緒にいてほしいとは言わないが、できるだけ長く仕事をしたいねと言っている」
「会社側の覚悟も必要だ。優秀な人は収入を上げるため付加価値が高い仕事をしたいと思う。そうした人が付加価値がある仕事をし続けられるために会社としても最新の技術や社会への影響が大きい仕事など、ビジネスをつくり続ける必要がある」
(2024/10/11 12:00)
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