エスペック、ボトルネック解消し生産効率向上 多能工化・自動化推進

(2024/11/13 12:00)

エスペックは国内シェア6割を握る環境試験装置のマザー工場である福知山工場(京都府福知山市)に、板金加工から組み立てまで七つの工場棟を構える。車載電池向けの需要増に伴い、カスタマイズ(個別対応)製品を中心に生産能力を増強している。力を入れるのは生産レイアウトの大幅刷新や生産工程の自動化、従業員の多能工化。国内生産拠点の生産高を現状比4割増の350億円に引き上げることを目標に掲げる。

  • 内外装材のユニットを組み立て工場に自動で搬送する

福知山工場でボトルネックとなっていたのがカスタマイズ製品の組み立てライン。部品加工の外注を増やすなどして既存の工場棟の一つを改装し、2024年から同製品の組み立て工場を従来の2棟から3棟体制にした。「生産リードタイムが異なる製品の組み立てが混在し生産効率が落ちていた」(末久和広取締役常務執行役員)ことから、生産リードタイムが長い製品と短い製品の生産棟を切り分けて生産効率を改善。同製品の生産能力は従来比7割増となる見込みだ。

環境試験装置は数十―百数十種類あるユニットを複数組み合わせてつくるため、製品仕様は数十万通りに及ぶ。多品種少量のモノづくりにおいて人手に頼る作業が多いが、「人手不足、作業者の高齢化などに対応するため、自動化は避けられない課題」(同)とし、性別や年齢に関係なく働きやすい環境を目指している。

  • カスタマイズ製品の一つ、車載電池向けの充放電チャンバー。顧客の要望に応じて槽内の圧力を逃がす放圧ベントや消火器などを備える

従来は重いエア工具を使用していた溶接のバリ取り、研磨工程の一部を協働ロボットで自動化。冷凍機モジュールの気密試験では、圧力センサーによる自動合否判定を採用した。プロジェクターで作業手順を表示し部品を組み立てられるシステムも用い、熟練者でなくても即戦力で働けるようにした。

数百キログラムあるユニットの搬送には無人搬送車(AGV)を2台導入するなど、積極的に自動化を推し進めている。今後、製品の外観検査や内外装材の溶接工程にも人工知能(AI)やロボットの導入を検討する。

自動化を進める一方、冷凍機モジュールの細かい配管の溶接や試験器のシーリング作業は「人手による性能の担保が必要で高度な技術が伴う部分」(同)であり、人材育成が欠かせない。そこで22年から従業員の多能工化に力を入れている。以前は一つの業務に5年間従事したが、6年間で溶接や製品組み立てなど一通りの業務を経験するジョブローテーションの仕組みに変えた。

「コロナ禍のように集団感染などで誰かが欠けた場合でも、他の人でカバーできる体制を整える」(同)ことでレジリエンス(復元力)の強化にもつなげる。

(2024/11/13 12:00)

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