金属パイプ極小R曲げ加工 湯原製作所、ベンダー・治具内製化で実現

(2024/11/13 05:00)

  • 手前から、曲げ部中心Rが直径の1・8倍、同0・8倍、同0・7倍のサンプル

湯原製作所(栃木県さくら市、湯原正籍社長)は、金属パイプの塑性加工や切削加工、接合加工技術を用いて、ユニットの継ぎ手など主に自動車部品を製造している。パイプの曲げ部中心R(半径)をパイプ直径の0・7倍で対応可能とする「極小R曲げ加工」は30年以上前に国内でいち早く量産化を実現した“得意技”だ。現在は電気自動車(EV)シフトの影響を見据え、新しい事業の柱として航空宇宙分野の開拓にも注力している。

作動油の流動性確保にはパイプの曲げにRをつける必要がある。一方、ユニット間の限られたスペースにパイプを通すには曲げRサイズの極小化が求められる。一般的な曲げ部中心Rサイズは直径の1・5倍だが、同社は独自のベンダー(曲げ加工機)を開発し極小R曲げを実現した。

同社の対応力を支えるのが、湯原社長が「会社の心臓」と評する「生産技術課」だ。治具の設計、製作などを担当し、部品ごとの治具を全て内製化している。

治具の製作は以前は2人体制だったが、湯原社長の入社後およそ30年間で10人に増員した。「会社の肝は『手の内化』する」(湯原社長)のが狙いだ。担当者の育成には新人の場合で最短でも5―6年程度かかるものの、治具を内製化することで突発的な依頼に対して社内で迅速に判断、対応が可能だ。各担当者がノウハウを身に付けることで、顧客への提案営業力も担保できる。

しわや割れ、破損といった不具合は「一度も発生したことがない」(同)と品質には自信がある。現在は切削加工も含め、量産品とサービス部品で計3000―4000点の自動車部品を手がける。

「EVシフトが本格的に進めば、高い割合で今の仕事がなくなる」(同)とみて、航空宇宙分野への進出も目指している。自動車向けで身に付けた技術を新領域で生かす考えだ。他方で自動車向けも「EVシフトで熱マネジメントに使う配管の加工需要があるはず」(同)と事業機会の発見に余念がない。

(2024/11/13 05:00)

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