(2024/12/2 05:00)
石破茂首相は29日の所信表明演説で、「日本全体の活力を取り戻す」と訴えた。30年前、世界の18%を占めた日本の国内総生産(GDP)は2023年に4%まで低下し、1位だった国際競争力が38位に落ち込んだことに危機感を示した。今回講じた総合経済対策は、成長型経済の実現に向けた意欲を示したものと評価したい。日本は経済好循環を実現させる千載一遇の機会を迎えており、これを後押しする政府支援には期待したい。
ただ総合経済対策の中には、本来なら当初予算に計上すべき施策を補正予算で措置している歳出が散見される。財政健全化には課題を残したと言える。
石破首相はこの30年を振り返り、配当や海外投資が増えた一方で、国内投資と賃金が伸び悩んできたと指摘。「安い商品はあるが、革新的な商品・サービスがあまり生まれてこない、という状況だった」と語った。だが、23年春闘から高い賃上げ率が続き、24年度の設備投資も過去最高となるなど「明るい兆しが現れている」と続ける。この機を捉え、政府支援を講じる石破首相の政策の方向は適切だ。
総合経済対策では、成長産業である人工知能(AI)・半導体支援や、レアメタル(希少金属)の供給源多角化支援、中小企業の大規模・高付加価値化に向けた設備投資支援、地方創生の交付金新設など、経済安全保障や地域経済にも目配りした。
ただ、これらの施策や物価高対策、減災・防災対策などで13・9兆円の24年度補正予算案を決め、半分近くを国債で賄う。経団連の十倉雅和会長は26日の会見で、総合経済対策は「潜在成長率を高める国内投資の拡大につながる」と評価する一方、「本来、重要施策への政府投資は当初予算で着実に計上し、補正予算は災害などの緊急対応に絞るべき」だと指摘。金利のある世界も見据え「財政規律が極めて重要となる」としていた。
石破政権は25年度当初予算案編成と税制改正を控える。少数与党ながら、国民民主党が求める「年収103万円の壁」見直しで税収減を抑えるなど、財政規律には十分に目配りしたい。
(2024/12/2 05:00)