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カーボンニュートラル実現に貢献するナトリウム冷却高速炉技術に関する日米協力の推進について

(2023/11/3)

カテゴリ:商品サービス

リリース発行企業:三菱重工業株式会社

(米国テラパワー社との覚書拡大について)


令和5年10月31日、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構と三菱重工業株式会社(以下「MHI」という。)、三菱FBRシステムズ株式会社(以下「MFBR」という。)、米国テラパワー社は、日本の高速炉実証炉の設計が2024年に始まることを受け、2022年1月26日に締結した「ナトリウム冷却高速炉技術に関する覚書」を両社の高速炉実証計画を含むように拡大しました。(締結日:10月30日、発効日:10月31日)

上記4者は、2022年1月にテラパワー社の「Natrium」開発への協力について「ナトリウム冷却高速炉技術に関する覚書」を締結し高速炉技術の開発について協議を進めてきました。

2022年12月に我が国において高速炉開発の戦略ロードマップが改定され、2024年より高速炉実証炉の概念設計が開始する計画が明確となり、2023年7月にMFBRが提案する「ナトリウム冷却タンク型高速炉(650MW電気出力)」が概念設計対象として、MHIが中核企業としてそれぞれ選定されました。テラパワー社は日本の大型化概念に対して経済性向上の観点で興味を示しています。

今回拡大された覚書により、日本の高速炉実証炉開発に基づきテラパワー社と日本が高速炉実証炉開発の概念全体を含めた協力の可能性について検討を行うことが可能になります。今回の改定では高速炉の経済性向上のための概念大型化、金属燃料の安全性等を新たな協力の議論の範囲として追加しました。

(機構理事長 小口正範コメント)
機構は戦略ロードマップで定められた高速炉実証炉の開発の役割を果たしていきたいと考えています。国際協力は開発を効率的に進めるうえで重要でありテラパワー社との拡大された覚書を通じ日米間の高速炉開発協力を発展していきたいと思います。

(テラパワー社代表取締役社長 クリス レベスク氏コメント)
テラパワー社は米国において345MW電気出力のNatrium炉について米国エネルギー省(DOE)の先進的原子炉設計の実証プログラムの支援のもと開発を進めており、Natrium炉の初号基は2030年の商用運転を目指しています。
日本が新型原子炉の市場投入に取り組む中、私たちはJAEAとの協力を拡大できることに興奮しています。我々は排出削減目標を達成するために、世界中の国において2030年代から新型炉を配備する必要があります。この合意は、日本の排出削減目標達成をサポートできる大型ナトリウム冷却炉の設計を評価する機会に役立つと考えています。

(三菱重工 常務執行役員 原子力セグメント長 加藤顕彦コメント)
三菱重工グループは国内における高速炉の実証炉開発を担う中核企業として、戦略ロードマップに沿って、着実に開発を推進していきたいと考えています。長年培ってきた技術と経験を活かし、テラパワー社との日米間の高速炉開発協力にも貢献していきたいと考えています。

(補足説明)
脱炭素エネルギーとして原子力エネルギーを持続的かつ安定に利用していくためには、高い安全性、経済性に加えて、放射性廃棄物の減容・有害度低減やウラン資源の有効利用等を実現する第4世代原子力システム(注1)の開発が必要です。その中でもナトリウム冷却高速炉(注2)は最も有望な技術のひとつと位置付けられています。
高速炉開発の「戦略ロードマップ」(2022年12月原子力関係閣僚会議決定)では、「高速炉技術の2050年カーボンニュートラルに向けた貢献を見通し、研究開発を効率的に実施していくためには、2030年頃までを目途に概念を固め、 2050年までに実証炉が運転開始されていることが望ましい。」とされ2024年からの概念設計開始が決定されました。また、「今後の原子力の方向性と行動方針」(2023年4月)においても、海外との戦略的な連携と自律的な次世代革新炉の開発の推進が求められています。
一方で2020年5月に米国エネルギー省(DOE)は、米国内原子力産業界を支援する先進的原子炉設計の実証に対し資金負担によりこれを支援する先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)を開始しました。そこでは、ビル・ゲイツ氏が会長を務める原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社の高速炉概念「Natrium」を2020年10月にARDPの支援対象として選定し、世界の次世代炉開発をリードすべくナトリウム冷却高速炉の実証炉の運転開始を目指し、その開発を開始しました。当時の米国の開発状況を踏まえ、日米におけるナトリウム冷却炉高速炉技術開発に係わる協力の第一段階として、テラパワー社の「Natrium」開発への協力について2022年1月26日に「ナトリウム冷却高速炉技術に関する覚書」を締結し燃料交換機や破損燃料検出系を含むナトリウム冷却炉に特有な技術など高速炉の開発協力について協議を進めてきました。
今回の改定では2022年12月に改訂された「戦略ロードマップ」の方針及び米国の開発状況を踏まえ、日米におけるナトリウム冷却炉高速炉技術開発に係わる協力として、テラパワー社の「Natrium」開発に日本の高速炉実証炉開発を加え覚書を改定しました。内容としては、以下の項目等を議論の範囲として追加しています。

・既存のNatriumの仕様よりも大型化した場合の、各種システム等の概念についての検討
・金属燃料のシビアアクシデントの情報交換等
・「Natrium」の許認可戦略に関する支援

このような取組を通じて、クリーンエネルギーの将来のため、高速炉開発に貢献していく予定です。

用語説明
(注1)DOEが2030年頃の実用化を目指して2000年に提唱した次世代の原子炉概念で、燃料の効率的利用、核廃棄物の最小化、核拡散抵抗性の確保等エネルギー源としての持続可能性、炉心損傷頻度の飛躍的低減や敷地外の緊急時対応の必要性排除など安全性/信頼性の向上、及び他のエネルギー源とも競合できる高い経済性の目標を満足するもの
(注2)金属ナトリウムを冷却材として用いる高速炉

三菱重工業株式会社
 ウェブサイト:https://www.mhi.com/jp/
 オンラインマガジン「SPECTRA」(日本語):https://spectra.mhi.com/jp
 公式Twitter:@MHI_GroupJP

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