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(2015/12/22 05:00)
英国と言えば黒のイメージがある。ロンドンの黒タクシー、ギネスビール―。栃木・奥日光で再建された旧英国大使館別荘は、ヒノキを使った黒の外装が美しい▼2016年夏の一般公開に先だって、栃木県が主催する視察ツアーに加わった。中禅寺湖畔にあり、2階から一望する水辺に心洗われる。夕日のぬくもりには、明治の文化人を想像した▼「この地は母国の湖水地方を思い起こさせる」と語ったとされる英国外交官、アーネスト・サトウが約120年前に自らの山荘として建設した。その後、英国政府が2008年まで使用。10年に無償譲渡をうけた栃木県は、解体調査から復元まで4億円超を投じた▼建物に県産材を使う一方、内装の壁紙には英国ゆかりのウィリアム・モリスの植物柄を施した。2階には紅茶を楽しめる「英国文化交流室」を設け、自然散策ツアーなども企画する▼栃木県を訪れた観光客は14年に8711万5000人。そのうち宿泊客は1割弱の787万5000人だった。3年連続で増えたものの、日光に泊まる客は東日本大震災以前の8割程度。サトウらが愛した国際的避暑地・日光の復活はなるか。瀟洒(しょうしゃ)な和洋折衷の別荘が、その一助になってもらいたい。
(2015/12/22 05:00)