[ オピニオン ]
(2016/1/15 05:00)
訪日外国人の急増が、日本の消費市場に大きなインパクトを与えている。2015年の訪日外国人数は9月時点で1448万7600人となり、過去最高だった14年を上回った。15年暦年の実績は週明けに発表されるが、2000万人に肉薄し、旅行消費額は3兆円を超える見通しだ。政府は1000万人を突破した13年に「次は2000万人の高みを目指す」としていたが、昨年12月に安倍晋三首相は「次なる目標は3000万人」と表明した。新たな目標に向け、環境整備に弾みをつけたい。
日本に来た中国人旅行者らが、大量に土産品などを買い込む”爆買い“は、15年の流行語大賞にもなった。国内景気は停滞感を払拭(ふっしょく)しきれず、訪日外国人の旅行消費を商機ととらえた動きが活発だ。今のところ中国経済減速による影響は出ていない。
大手百貨店が実施した「初売り」初日の免税売上高は大丸京都店(京都市下京区)で前年に比べ1・8倍、三越銀座店(東京都中央区)では倍増したという。家電量販店などを含め、流通大手は免税カウンターや通訳スタッフの増強などに取り組んでいる。
訪日外国人に占めるリピーターの割合が半分を超えて街歩きを楽しむ旅行者も目立つようになり、外食や食品・飲料業界、地方自治体も動きだした。松屋フーズは16年度内に牛めし店舗の「松屋」と、とんかつ店舗の「松乃家」全1000店舗余りに日本語・外国語対応の自動券売機を導入する。また、飲料自動販売機で最大手の日本コカ・コーラグループが外国語対応を始めている。
一方、地域活性化センターの調査によると、東京都内にある各地の自治体のアンテナショップの数は15年4月時点で前年に比べ3店増の55店と過去最多となった。情報発信力を高め、訪日外国人の誘客も狙うスタンスだ。
政府は成長戦略に観光立国を掲げ、ビザ(査証)発給要件の緩和や消費税免税対象の拡大を進めている。事業者や地域を巻き込んだ歯車が回り出した。20年の東京五輪に向け、外国人旅行者受け入れの環境整備を急ごう。
(2016/1/15 05:00)