[ オピニオン ]
(2016/1/14 05:00)
米ラスベガスで開催された家電見本市「CES」の今回の特色は、自動車の最新のIT化が随所に見られたことだ。自動運転などで自動車とITの垣根がなくなっていき、かつITシステム自体が巨大化・高度化していけば、やがて水平分業の流れが生まれてくるはずだ。将来、自動車とIT、二つの業界をまたいだ再編が起こる可能性は十分にある。
今回のCESで、自動車とITにまたがる主な発表には次のようなものがあった。第一に、米フォードが米アマゾン・ドット・コムの技術を使い、音声で車を操作できるシステムを開発すること。第二に、トヨタ自動車がフォードとともに、車載パネル上でスマートフォンを操作できるシステムを共同開発すること。
第三に、米ゼネラル・モーターズ(GM)がインターネット配車サービスを手がけるベンチャー企業に出資すること。そして第四に、日産自動車が電気自動車を操作するクラウドシステムに米マイクロソフトのシステム基盤を採用すること。いずれも今の段階では自動車メーカーがITベンダーの持つサービスや商品のうちの必要な技術だけを採用する「いいとこ取り」の構図にとどまっていると言えるだろう。
だが、両者の提携関係が今後も局所的なものにとどまると考えるのは難しい。より包括的な関係に発展すると考えるのが自然だ。複雑・高度化するITシステムが、自動車メーカーの背中を押すことになるのではないか。
トヨタは今回のCESで、新たに設立した人工知能研究の新会社の詳細を発表した。米国の最先端の専門家がずらりと並ぶ陣容で、信頼できる自動運転技術を開発することの難しさを感じさせた。
またCES開幕前には、フォードが米グーグルと提携し、グーグルが開発中の自動運転車の生産をフォードが担当するという報道もあった。カーナビ分野への進出を着々と狙う米アップルやグーグルの動きもある。
巨大な垂直統合モデルである自動車産業も、水平分業の波にさらされる時代が近づいている。
(2016/1/14 05:00)