[ その他 ]
(2016/2/18 05:00)
隣家のご主人が亡くなったのは1月初旬。奥さんに先立たれ、80歳を過ぎての独り暮らしで、2日前に庭木の手入れにいそしむ姿を見かけたばかりだった▼北風が冷たい宵の口、洗濯物が干しっぱなしだと気づいた近所の人が呼び鈴を鳴らしたものの返答なし。あたりの人を集めて雨戸を外して踏み込んだら台所に倒れていたそうだ▼以来、隣家は天気がよい日も物干し台には2本の竿(さお)が架かっているだけ。夕暮れどきの窓に明かりは灯らない。町内に住人がいない家が一つ増えた▼総務省統計局が5年ごとに実施する住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は2013年に820万戸で過去最高だった。15年5月に空家対策特別措置法を施行し、倒壊のおそれがあれば強制的に解体できるようにするなど国や自治体が対策を本格化している▼立春が過ぎ、隣家の庭の紅梅がほころんだ。梅は剪定(せんてい)を怠ると枝が茂って花付きが悪くなる一方、害虫がつきやすくなる。先行き、手入れをしてくれる人はいるだろうか。太宰府へ赴く菅原道真は庭の梅に「あるじなしとて春な忘れそ」と命じたが、人が手をかけてこそ東風に吹かれてふくよかな香りが立ちのぼり、西方へ旅だった故人のもとに届くだろう。
(2016/2/18 05:00)