[ その他 ]
(2016/3/8 05:00)
2月29日の日刊工業新聞第2部に掲載した作家のいとうせいこうさんと、パタゴニア日本支社長の辻井隆行さんの対談。間近で聞いていると実に興味深かった▼“ベランダ園芸家”を自称するいとうさんは「巧妙化された鉢でも、思うように育たない。だから面白いんだよね」と自然観を語った。もし枯らしても「それが自然なんだ」と受け止める▼東京生まれの辻井さんはある時、都会の景色を「異常だ」と感じた。登山やキャンプなどのアウトドア用品大手に勤め、休日にはシーカヤックを操る。東北の漁師が海を「太平洋銀行」と呼んでいると紹介した▼捕る魚は利子の範囲だけ。捕りすぎて元本を削らないように漁をする。余れば人にあげる。「津波で船を失い、借金している人もいる。魚を売ればお金になるのに(立ち寄った自分に)くれちゃうんです」と驚きを隠せない▼企業も資源を使いすぎると、いずれ原材料がなくなる。利益をため込むとステークホルダーからそっぽを向かれる。いとうさんは「どれだけの消費者に応援してもらえるかが企業には重要。もうけているけど嫌われている会社は5年後どうなるか」と忠告する。企業の応援者は貨幣に換算できないが、立派な企業価値だ。
(2016/3/8 05:00)