[ オピニオン ]
(2016/4/15 05:00)
エレクトロニクス業界が、製品に含まれる化学物質情報を取引先に伝える方式の統一に向けて動きだした。10年近く続いた乱立状態が解消できれば各社の無駄の削減につながる。取引先である部品メーカーや中小企業にとっても朗報だ。
統一の候補は、経済産業省が開発した伝達方式「ケムシェルパ」だ。これまでに98社・団体が賛同を表明しており、中小の関心も高い。
化学物質情報の伝達は欧州が主導する化学物質規制への対応策として生まれた。最終製品を組み立てる企業が、部品・部材の製造・加工で使った化学物質を事後的に調べるのは事実上、不可能だ。仕入れ時に物質情報の提供を受ける必要があるが、その効率化にはあらかじめ対象となる物質や書式を決めておくことが望ましい。
しかし日本では大手企業の考え方の違いなどから、2000年代に二つの方式ができてしまった。その他に自社の調達基準に基づく情報を求める企業もある。伝達手段ひとつとっても電子メールやFAX、納入先企業の情報システムへの直接入力などバラバラなのが実情。同じ部品を納める場合でも、相手の方式に合わせなければならない。
このため取引先の多い部品メーカーほど回答が煩雑となる。体力の劣る中小企業には負担が重い。経産省の調査によると大企業の化学物質管理費用は平均で年間2580万円。中小企業では年間220万円という。業界標準の方式ができれば、これを軽減できる。
自動車業界には伝達方式の世界標準があり、企業間で方式の違いによる無駄は起きない。日本のエレクトロニクス大手は近年、国際競争力の低下が問題になっているが、こうした”見えないコスト“が足を引っ張っている懸念がある。
すでに「ケムシェルパ」に賛同した企業は、早期に移行時期を明示してもらいたい。取引先の準備が進み、賛同企業を増やすことにもつながろう。業界の伝達方式統一が、日本全体のサプライチェーンの強化を後押しすることを期待する。
(2016/4/15 05:00)