[ オピニオン ]
(2016/5/12 05:00)
徳川時代中期の異才、平賀源内は獄中での最期から230年余りになるが、人気が息長い。高松藩の下級武士を捨てて「えれきてる」の復元・興行、本草学、文芸、焼き物と多彩な足跡を残した。大阪商業大学教授の石上敏さんによれば「源内ブームは周期的で、次が9回目」とか。
生地である香川県さぬき市の人は親しみを込めて”源内さん“と呼ぶ。地元経営者らの協力で2009年に開館した平賀源内記念館は目立った宣伝もないようだが、広域から年1万人の来場があるという。
ブームの火付け役の一つが劇団わらび座が演じる「奇想天外歌舞音曲劇・げんない」。13年4月に愛媛県で初演後、本拠地の秋田などで500回の上演を重ねた。今度は28日の大阪市を皮切りに全国150カ所の巡回公演に出る。
源内研究の現役第一人者とされる石上さんは評伝を17年刊行予定で執筆中。「従来描かれたすごい人ではなく、借金にも悩んだ等身大の像を描く」と話す。
石上さんによれば源内の生きた時代は封建体制下でも比較的、自由な空気があふれていた。今日まで続く人気は自由を希求する庶民のノスタルジーか。平成の世に、またも出番の源内さん。泉下の異才に、現代はどう映るだろう。
(2016/5/12 05:00)