[ オピニオン ]
(2016/6/17 05:00)
加工食品すべてに原料の原産地表示を義務づける案を政府・自民党が検討している。中小食品メーカーは、産地が変わるたびに包装の印刷を変えるなど作業の手間とコストが増えると反発している。ただ消費者にとっては食の安心・安全が高まり、購入促進動機にもなる。長い目で見れば、業界全体に恩恵をもたらすはずだ。
スーパーの食品売り場では「長野県産レタス」「淡路島のたまねぎ」など国産を売り物にした販促が目立つ。とはいえ食品全体の国産比率は決して高くない。過半を占める加工食品や業務用は輸入品が多い。例えば冷凍食品は店頭で定価の3―5割引きの特売が珍しくないが、原産地を見ると中国、韓国、米国、タイなどが主流だ。
しかし最近は、国産をアピールする商品も増えてきた。味の素冷凍食品のギョーザは国産野菜100%使用をうたい、売り上げを伸ばした。冷凍のホウレンソウや枝豆は国産品が人気。消費者が低価格から、おいしさや品質志向にシフトしている一つの現れといえる。こうした動きは今後、他の食品に広がることが予想される。
価格重視だけで加工食品を作るとなると、原料コストを削減して調味料による味付けを工夫せざるを得ない。食材や物流費が上がっている昨今は、特にその傾向が強くなる。安い原料で味はそこそこ、あとは宣伝力や営業力でカバーするのは、決して正しい戦略ではない。
原産地表示は輸入品を閉め出し、国産優遇につながるとの批判もあるようだ。しかし消費者が好まないのは、安全や品質管理に問題がある国・地域からの輸入食材だ。きちんと説明し、必要があれば改善するのもメーカーの仕事だろう。
工業品でも、自動車部品や電子部品の化学物質を追跡調査する必要が年々、高まっている。まして人の口に入る食品では、厳格な原料表示が当然だろう。それを渋る企業は、調達や品質管理に問題があることを疑われかねない。健全な品質競争の第一歩として、原産地表示に前向きに取り組んでもらいたい。
(2016/6/17 05:00)
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