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[ 自動車・輸送機 ]
(2016/7/4 05:00)
三菱自動車は4日、水島製作所(岡山県倉敷市)で燃費不正問題を受けて停止していた軽自動車の生産を再開する。20日に本格生産を始め、9月には昼間のみ操業する1直勤務から昼夜交代の2直への切り替えも視野に入れる。部品を供給するメーカー各社は三菱自の生産再開に安堵(あんど)するが、車の販売が不正発覚前の水準に戻るかは不透明。さらに、三菱自と日産自動車との資本提携によって調達環境が一変することに危機感も募らせている。
「新しい一歩を踏み出すので協力してください」。三菱自が1日に岡山市で開いた部品メーカー向け説明会。益子修三菱自会長兼社長は一連の問題を説明した。協力を求める三菱自の姿勢を参加者はおおむね高く評価。ヒルタ工業(岡山県笠岡市)の晝田眞三会長は「回復に時間はかかるが、一歩一歩進めるしかない。そういう覚悟でやっていく」と決意を新たにした。
三菱自は説明会で4日からの軽の生産計画を提示した。生産は順次拡大し、7、8月に各約5000台、9月には約9000台に引き上げる計画だ。
中長期では18、19年にそれぞれ投入予定の次期軽とスポーツ多目的車「RVR」を水島製作所で生産する方針も示している。同製作所の稼働停止に伴う部品メーカーへの補償については、納入していない部品や保管費用、従業員の休業手当てなどを対象とし、7月にも支払いに応じる用意があると説明した。
ただ、三菱自の生産計画に対し、部品メーカーの見方は厳しい。ある装飾部品メーカー幹部は「車は計画通り売れるのだろうか」と三菱自の販売見通しに懐疑的だ。
さらに日産との資本提携によって、複数の部品メーカーが「調達に大きな変化があるだろう」と危惧する。益子三菱自会長は「事業を拡大するチャンスと前向きに捕らえてほしい」と語り、部品メーカーへの協力を約束。日産も水島製作所周辺にある部品メーカーの競争力を評価していると持ち上げた。だが一方で「品質と価格で競争力がない部品を採用するのは無理があり、自助努力もしていただきたい」(益子会長)とクギを刺した。
日産と取引が多い部品メーカーとの競争は避けられない。まずは日産主導で開発や購買が進む次期型軽の調達が近く本格化する見込みで「これを受注できなければ次はない」(伝達部品メーカー)。
とはいえ三菱自に軽部品を納めてきたメーカーには実績があり、「軽向けは強みを生かせる。これからは軽量化など先行開発に力を入れ、競争力を高めたい」(プレス部品製造)という。部品各社は危機感をもちつつも、生き残りに向け一歩を踏み出す。
【三菱自、軽の販売再開−店頭には値下げ圧力】
三菱自動車の燃費不正問題で停止していた軽自動車の販売が、7月に入って再開した。4月に不正が発覚してから2カ月ぶりの販売だが、販売現場は準備が追いつかず、ひとまずはその場しのぎで滑り出した。価格は停止前から据え置いたが、販売現場では値下げ圧力がかかりそうだ。
「今日から七夕フェア。展示車はなんとか間に合いそうだがチラシには入れられなかった」。軽「デイズ」シリーズの販売を再開して初の週末を迎え、首都圏の日産自動車の販売店のスタッフはこう話す。七夕フェアのチラシには小型車「ノート」「マーチ」の写真が入っているがデイズはない。「不正対象車を持っているお客さまの補償対応をしている最中でかなりタイトなスケジュール」(日産の販売店)で十分な準備をできなかった。
店舗に置く展示車両や試乗車の手配も急ぐ。新たな燃費値に直したカタログもまだできていない。首都圏の三菱自の販売店では「タブレット端末で『eK』シリーズの修正値の案内をしている」。
三菱自も日産も販売再開にあたって価格は据え置いた。だが販売現場での実売価格には値下げ圧力がかかる。すでに対象車を持っているユーザーには補償金として10万円が支払われる上に、不正のイメージがついてしまった。別の三菱自の販売店スタッフは「補償金をもらうお客さまと公平性を持たせるためにも以前販売していた時よりも踏み込んだ値引きは避けられない」と話す。
一方で「もともと軽は利幅が少なく、大幅な値引きはできないことに変わりはない。10万円はあくまで前に買ったお客さまだけだと理解をしてもらわないといけない」(日産の販売店)との声もある。
不正対象車は両社にとって主力車種だ。主力を欠いた両社の5―6月の国内販売は大幅に落ち込んだ。販売の回復と顧客基盤を維持するためになくてはならない車種だけに、別の日産販売店スタッフはこうこぼす。「再開後の販売は厳しいだろう。だがないよりはましだ」。
【事業構造改革室を設定−再発防止策推進】
三菱自動車は燃費不正問題を受けて再発防止策を推進する「事業構造改革室」を1日付で設定した。室長には日産自動車元副社長の山下光彦副社長が就任する。不正問題が起きた開発本部の幹部や、品質統括本部、監査本部の幹部を含むメンバーで構成する。
外部有識者による特別調査委員会が7月末をめどに報告をまとめる予定で、その内容を踏まえた再発防止策を追加で策定することも行う。
(2016/7/4 05:00)