[ オピニオン ]
(2016/7/4 05:00)
罪のない市民や外国人を狙った卑劣なテロに、強い怒りを覚える。バングラデシュの首都ダッカのレストランで起きた人質事件で、国際協力を志した幾人もの邦人が尊い命を奪われた。本人とご遺族の無念を察してあまりある▼「テロとの戦い」はサイバー世界の戦いに似ている。敵がどこにいるのか、何が狙われるのか予見しがたい。つまり完全な防御はできない▼防御力を高めるには対外的な関係を断ってしまうのが効果的だ。テロを避けるには海外に行かなければいいし、ネットに接続しなければサイバー攻撃はシャットアウトできる。しかし、そうした孤立した社会は、たとえ安全でも多くの人が望まないだろう▼必要なのは抑止力である。犯人を突き止め、時には軍事的手段を使っても厳しく処罰する。同時にソフトな方法を併用する。例えばイスラム原理主義に対しては、テロが他の信者や多くの同胞の立場を悪くするものだと理解してもらう。過激な行動は減らせよう▼人類史は対立と和解の歴史だ。利害対立をなくすことはできなくとも、融和の道は必ずある。テロを憎み、追放することは強硬手段だけでは実現しない。テロを克服する知恵が、21世紀の人類に求められている。
(2016/7/4 05:00)