[ オピニオン ]
(2016/7/13 05:00)
人口大国のインドでは、公共バスは常に定員オーバーだ。片手で窓枠をつかみ、車外にぶらさがる人もいる。現地駐在員によれば切符売りは片手乗車でもしっかり料金を徴収するとのこと。“ただ乗り”は見逃さないのだ。
東京都の舛添要一前知事による公金の私的流用で世界的に知られた日本語「せこい」。商社の知人が「あえて訳すとfree ride(ただ乗り)になるだろう」と話してくれた。別荘送迎や家族旅行がタダですんだと考えれば一理ある。
英国の国民投票で欧州連合離脱派が支持を集めた背景には、東欧などからの移民の“ただ乗り”への怒りがある。さほど税金を納めない移民が病院や学校などを利用し、旧来の住民が公共サービスを受けづらくなったとの不満だ。
似たような問題は沖縄でも起きている。本土からの移住者が増えたものの、定職がないままの長期旅行気分やシニア世代が多く、中には住民票を移さない人も。自治体の税収増に結びつかないのだという。
“薩摩守”という俗語は今や若い人には通用しないだろうが、古今東西、交通機関のただ乗りは明白な違法行為である。相手の許しを得た“便乗”と取り違えてはいけない。政治家も産業人も気を引き締めたい。
(2016/7/13 05:00)