[ オピニオン ]

社説/終戦記念日

(2016/8/15 05:00)

71回目の終戦記念日を迎えた。戦禍を直接知る世代が減る中で、戦後に構築された政治・経済体制の見直しが進んでいる。新たな世代が自ら国のあり方を考えるのは当然だが、その前提となるのは繁栄の礎である平和の希求であることを、産業界の立場から強く訴えたい。

昨年9月末、安倍晋三首相が主導してきた安全保障(平和安全)法制の2法が施行された。戦争の放棄による平和主義は日本の戦後体制の最も重要な要素であり、国民各層に広く浸透した理念である。

ただ最小限の自衛力の保持は、こうした平和主義に反するものではない。日米同盟を基軸とする現在の安保体制を、産業界は支持している。周辺国の軍備が著しく増強され、ミサイル攻撃の脅威も高まる中にあって、政府が対策を強化することは避けて通れない。

そうした中にあっても、自衛隊の規模や装備を過剰に拡張することは厳に戒めなければならない。軍事力を誤って行使し、愚かな戦争に突き進んだ過去を繰り返さぬよう、国会と国民世論が政府を監視する覚悟を新たにしなければなるまい。

2014年4月には、従来の「武器輸出三原則」が「防衛装備移転三原則」に改められた。平和貢献や国際協力に資する場合などに限って、透明性を確保しつつ防衛装備の輸出や海外の企業に技術を移転することが可能となった。

関連業界が今後、各国の軍や兵器メーカーと関係を深めることが期待される。しかしそうした場合でも、日本の優れた技術を世界平和に役立てるという矜恃(きょうじ)を失ってはならない。

日本の戦後体制は70年を越す戦火なき時代と、経済発展による空前の繁栄をもたらした。時代とともに見直す必要は生じようが、大前提は常に平和の希求である。

これまでは戦争世代の悲惨な経験を語り継ぐことが重視されてきた。今後はそれに加えて、繁栄の妨げとなる戦争を避けることこそが最大の国益であるという意識を、戦後世代が自ら持つ必要がある。

(2016/8/15 05:00)

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