[ オピニオン ]
(2016/8/26 05:00)
夏の花火大会シーズンも残りわずか。夜空に咲く大輪は科学技術の結晶でもある。花火の色や明るさは火薬に詰める金属の種類で変わり、形の表現には高度な設計が求められる。花火玉には多くの繊細な技術がつまっている。花火をミクロの科学とすれば、ナノの科学がナノテクノロジー。1ナノメートルは髪の毛の5万分の1の細さという極微の世界だ。かつて米国では、1個の角砂糖に図書館が収まるといううたい文句で推進された。
日本はカーボンナノチューブなど代表的なナノテク材料を世に出してきた。そうした自負の半面、アジアのナノテク研究は中国や台湾などに拠点が移ってしまった。
仙台で開かれていた同分野の世界最大の国際会議が25日、閉幕した。日本での開催は11年ぶり。というのも日本にナノテクの学会がなく招致活動が「一筋縄ではいかなかった」と、組織委員長で東北大学教授の寒川誠二さんは漏らす。
ナノテク先進国の米国は、社会への“出口”をまず考え、それに沿って多様な分野の研究者が連携する。一方の日本は、今でも分野ごとに懸命に出口を模索している段階だ。多様な技術を融合すればこそ、いずれ花開く。日本でナノテクが大輪を咲かせる日はいつになるのか。
(2016/8/26 05:00)