[ オピニオン ]
(2016/8/29 05:00)
鮮やかな黄色が目に飛び込んでくる。ゴッホの名画『ひまわり』をゆっくり鑑賞させていただく機会があった。1987年(昭62)、安田火災海上保険(当時)が約53億円で落札した。一枚の絵画の取引としては過去最高だった。
今年40周年を迎えた損保ジャパン日本興亜美術館(東京都新宿区)。開館12年目にコレクションに加えた名画には「高すぎる買い物」という批判もあった。館長の中島隆太さんは「『ひまわり』購入は当館の転換点になった」と語る。
入館者数は86年の約3万人が87年に24万人に増えた。美術館の認知度が上がったことで若手画家の展覧会や表彰企画も盛り上がりをみせるようになり、企業ブランドも高まった。
中島さんはそうしたPR効果に加えて「美術作品を後世に残すことが美術館の大きな役割。企業が関わっているからできることがある」と胸を張る。バブル期に日本人が争って買った洋画の多くは、その後に海外へ逆流した。しかし『ひまわり』は残った。企業は短期的な利益追求だけでは成り立たない。社会の一員としての自覚が不可欠だ。損保ジャパン日本興亜が文化活動を支援してきたのもその一例だろう。名画を日本で鑑賞できる喜びを、改めてかみしめたい。
(2016/8/29 05:00)