[ オピニオン ]
(2016/9/8 05:00)
先月中旬、東京メトロ銀座線の青山一丁目駅で視覚障害者がホームから転落し、亡くなるという痛ましい事故が起きた。一報を聞いて「ホームドアがあれば起きなかった事故」と、やるせない思いをした。
国土交通省によると、全国約9500駅のうちホームドアを設置しているのは2016年3月末で665駅。東京五輪・パラリンピックのある20年度末までの目標を加えても800駅だ。すべての駅に必要ではないだろうが、4年後にも設置率は10%に満たない。
設置が進まない理由を鉄道会社に尋ねたことがある。「ホームにスペースが必要で、設置できる駅が限られる。機器の重さに耐えられない駅も多く、まず補強工事が必要」という回答。素人が想像するほど簡単ではなかった。
国交省は事故を受けて、対策の検討会を設置した。ここで議題となっているのが「心のバリアフリー」。健常者が心のバリアーを取り除いて障害者に接することを指す。誰かが声を掛けていれば―という事故の反省に立っている。
設備面での障壁を取り除くバリアフリーは、設計の基本思想として根付きつつある。事故は設備面での不十分さを、いかに人の意識で乗り越えるかという、次の課題を示唆している。
(2016/9/8 05:00)