[ オピニオン ]
(2016/9/20 05:00)
小さな電源を束ね、一つの発電所のように扱う「仮想発電所」の構築を目指す経済産業省の支援事業が動きだした。点在する電源をIoT(モノのインターネット)で制御するため、IoTの社会実装の面でも期待されている。現在は実証事業だが、これをリアルなビジネスとして立ち上げてもらいたい。
仮想発電所の例が、家庭やビルにある蓄電池の制御だ。電力が不足しそうになると蓄電池に放電させる。蓄電池1台から4キロワットを放電できるとして、10万台が一度に動くと火力発電所並みの40万キロワットを生み出せる。
駐車中の電気自動車の電池や非常用発電機も束ねると、より大きな電力を補える。電力の不足時に家庭やビルの電力使用量を抑制する仕組みと連動することで、電力のピーク抑制に、より大きな効果を発揮しよう。
これは既存の発電システムのコスト軽減につながる。現状では、事前に予想した電力需要を上回る場合に備えて常にLNG火力などが待機している。需給調整を仮想発電所が肩代わりできれば、電力会社は待機用の発電所を減らせる。
再生可能エネルギーとの連携も仮想発電所に期待される。太陽光や風力発電の発電量は不安定だが、不足時に電力を放出し、逆に作りすぎたタイミングで充電を指示する。離島などでは電力の供給過多を防ぐため、再生エネからの送電を停止する「出力抑制」を実施している。こうしたムダを排除できれば再生エネの利用が増やせる。
経産省は関西電力やNECなど7グループを仮想発電所の実証事業者として採択。2016年度は29億円の予算で各事業を支援する。17年度予算では倍増の60億円を要求した。
経産省は10―14年度、横浜市など全国4地域でスマートコミュニティー実証事業を展開した。この成果として家庭やビルのエネルギー管理システムが商品化され、節電した電力を取引するネガワット取引市場を17年度に創設するはこびとなった。仮想発電所の実証事業も、新しい電力ビジネスを生み出すきっかけにしてほしい。
(2016/9/20 05:00)