[ オピニオン ]
(2016/9/22 05:00)
日本の技術力は多くの分野で世界最先端というのが現代の一般常識だろう。しかし中年以降の世代なら、ある時代まで「日本は民生品や応用技術には強くても、基礎的・基盤的技術は欧米に劣る」と評された記憶があるに違いない。
高速増殖原型炉「もんじゅ」が廃炉に向けた最終調整に入った。原子炉の燃焼で生まれるプルトニウムを再利用する「核燃料サイクル」の要となる国家プロジェクトであり、巨費を投じながら挫折することがやるせない。
政府が引き続き、高速炉研究に取り組む決意を示したのは当然だ。原子力発電所の再稼働を進める上でも、核燃料サイクルというエネルギーインフラは欠かせない。ただ日本はかつて原子力船「むつ」の開発を断念した。青森県六ケ所村の再処理工場も足踏みしている。
被爆国だから最先端の原子力研究が難しいなどという理屈は存在しない。しかし、その分野に明るい展望を持つ優秀な若手技術者が集まらなければ、どんな技術でもいずれジリ貧に追い込まれてしまう。
間もなくノーベル賞発表の季節。基礎研究力を徐々に高めてきた日本は、毎年のように世界に存在感を示せるようになった。原子力でも世界に誇れる成果を上げる日を期待している。
(2016/9/22 05:00)