[ オピニオン ]

社説/団塊世代の「2025年問題」−医療・介護人材の確保に知恵絞れ

(2016/10/13 05:00)

高齢化社会の進行に伴い、介護現場の人材不足や医療・介護の連携の必要性などさまざまな課題が指摘されている。対策も議論されているものの、決め手がないのが現状だ。後期高齢者(75歳以上)が膨れあがる「2025年問題」の解消に向けて知恵を絞る必要がある。

団塊の世代が75歳を迎え、後期高齢者人口が約2200万人に達する25年。国民の5人に1人が後期高齢者となり、医療・介護の需要が増大する。

とりわけ介護人材の不足は深刻だ。厚生労働省の「2025年に向けた介護人材にかかる受給推計(確定値)」によると、25年度の介護人材の需要見込みが253万人なのに対し、現状推移シナリオによる介護人材の供給見込みは215・2万人で、37・7万人が不足する。

すでに介護人材は不足しており、ニーズは高まる一方だが先行きは明るくない。介護福祉士を養成する大学や専門学校への入学者は減少しており、定員割れもめずらしくない。

高齢化と同時進行している少子化により、若年人口も減少し続ける見通し。加えて介護現場には“過酷労働”のイメージが定着している。介護施設を運営する法人や専門学校では、イメージ向上活動を展開する例や、労働条件・環境の整備に力を入れる例も見られる。

一方で、疾病の急性期から慢性期、さらには介護まで切れ目のない「地域包括ケア」を提供できる医療介護一体型を志向する病院が増え始めた。人材育成においても、看護系学科と介護系学科を多数併せ持つ大阪滋慶学園(大阪市淀川区)では、多職種連携の第一歩として看護と介護の連携授業を導入し、連携の幅を広げようとしている。

医療・介護体制の維持には、まず社会保障財政バランスの崩壊を防ぐことが必要だ。その問題をクリアすることを前提に、実際にサービスを提供する体制を整えなければ「2025年問題」は克服できない。ロボットの活用など医療・介護の省力化を進めるとともに、人材の量の確保と質の向上に向けて挑戦していかなければならない。

(2016/10/13 05:00)

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