[ オピニオン ]
(2016/10/28 05:00)
鉄鋼や石炭など中国の生産過剰の解消を求めて、先進各国が圧力を強めている。安価な中国製品が世界を席巻し、自国産業に悪影響が出ているだけに当然といえる。ただ中国は資本主義経済の秩序が十分に機能した国ではなく、外圧で物事がうまく運ぶとは限らない。関連する企業は、それをリスクとして認識しておくべきだ。
先進各国は主要20カ国・地域首脳会議(G20)などの国際会合で、繰り返しこの問題を取り上げ、中国に実効性ある対策を取るよう攻勢をかけている。新たに解決策を討議する国際フォーラムの設置を決めたが、先ごろ開いたその準備会合には中国代表は姿をみせなかった。
一方、中国政府は2020年までに鉄鋼の生産能力を最大1億5000万トン、石炭を同じく5億トン削減する目標を掲げている。鉄鋼では国内2位の国有企業を核とした経営統合を主導。さらに“ゾンビ企業”と呼ばれる赤字経営の大手国有企業を救済せずに破たん処理した。しかし、こうした処理の背景には中国最高指導部内の主導権争いがあると分析されている。
大手の製鉄所は従業員数が多く、裾野産業も広い。中国でも地域経済にとって不可欠の存在だ。そのため“ゾンビ企業”が温存されがちで、過剰設備の整理が進まない。そうした傾向は中央の有力者の出身地であるほど顕著になっている。地方都市の大規模な国営企業が整理の対象となることは、その地方を地盤とする権力者の権力失墜を意味するのだという。
中国では来年秋に5年に1度の共産党大会が開かれ、最高指導部も何人かが入れ替わる。これを前に激しい人事抗争が展開されており、すでに一部の地方政府ではトップ交代や有力者の失脚が起きている。同国の産業政策も、政界の主導権争いと多分に結びついている。
こうした背景があるだけに、それぞれの地域を基盤とするボスが外圧に簡単に屈するわけにはいかない。国際協調による中国への圧力は決して無駄ではないが、まずは同国内の事情を冷静に見定めることが肝要だ。
(2016/10/28 05:00)