[ ロボット ]
(2016/11/9 05:00)
◆アキハバラニュース・エディター リノ・J・ティブキー◆
ホンダの取締役専務執行役員で子会社の本田技術研究所の社長を兼務する松本宜之氏が、欧州、米国、そして日本に散らばっている本田技術研究所の人工知能(AI)研究チームを東京都内の研究所に統合する方針を表明した。新しいAI研究拠点が世界最大級の都市に設置されるのはとても素晴らしいが、一方で懸念がないわけではない。それについては後ほど触れるとして、ちょっと寄り道を。
アシモの驚くべき能力
2013年3月に放映されたNHKスペシャルの取材チームは、ホンダのロボット研究所でのインタビューに加えアシモのデモという、めったにない機会が与えられた。番組では世界最高の身体能力を持つこの人型ロボットについて、目新しいニュースがあったわけではないが、その器用さと比べても、アシモのAIを使った日本語能力は際立っていた。
リアルタイムのデモでは、アシモが3人の前に立って彼らの質問を聞き、個人個人にはっきりと適切な答えを返していた。これだけでも素晴らしいが、アシモの言語AIの能力をよりいっそう印象付けた要素がある。それはアシモに対し、3人が同時に質問していたということだ。
人間によるジェスチャーの基本認識に加えて前述した身体能力というアシモの驚くべき技能は、3年半も前に実証されたものだ。それから現在までに、どれほど機能が進歩していることだろうか。ロボット開発となると、ホンダは驚くほど秘密主義を貫いている。
AI研究人材を集結
そうしたことが、私の目を先週のニュースに向かせることになった。松本氏によると、本田技術研究所の研究者とエンジニアとを一緒にし、国内からも人材を供給しながら、市場性の高い製品づくりに向けて活動するのだという。それ自体、先を見越した前向きな取り組みと言えるが、仕事を切り離すことに加えて、ホンダのAIもそのロボット同様、島国化を示すことになるような気がする。
一方で、前回報告した通り、全日空(ANA)は国際ロボットチームに出資し、トヨタはAIとロボットに焦点を絞ったトヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)を米国に設立した。そして、ソフトバンクとそのフランス子会社のアルデバラン・ロボティクスは人型ロボット「ペッパー」の世界展開に忙しい。もちろん、日本企業がAIやロボットで国際的に活動することは本来備わっている要求ではない。しかし、そういう行動を起こす前向きな人たちを否定するのは難しい。
本田技術研究所が2017年にオープンする新しい研究センターは、おそらくAIを組み込んだ実用的な製品を作り出していくことだろう。しかし、そこに落とし穴が潜んでいるのだ。ホンダの年間売上高に占める国内販売はわずか25%に過ぎない。比ゆ的にしろ文字通りにしろ、ホンダのAIが日本語しかしゃべらないとしたら、どうなるだろう。
(隔週水曜日に掲載、「ニュースイッチ」に英文)
(2016/11/9 05:00)