[ オピニオン ]

社説/サービス業の標準化−産学官横断の新たな取り組みを歓迎

(2016/11/16 05:00)

オールジャパンでサービス産業の標準化に取り組む機運が高まってきた。12月に日本品質管理学会とサービス学会、日本規格協会が旗振り役となって産学官横断の検討組織が発足する。経団連なども参加予定だ。小売りや飲食、宿泊、介護、運送業など各業界が規格づくりの参考となる指針をまとめる。

これまでサービス業の標準化が遅れてきた大きな理由に、縦割り行政がある。所管する省庁が経済産業省や国土交通省、厚生労働省と業種によってバラバラで、推進役が生まれにくい構造だった。

そのためもあって、現在のサービス業界は自主規格が乱立している状態。水準や内容も玉石混淆(ぎょくせきこんこう)だ。

これまで政府が何もしてこなかったわけではない。安倍晋三政権が2014年の成長戦略の中でサービス産業の生産性向上を掲げ、その号令の下で関係省庁が標準化・認証制度整備に動いた。例えば今夏から始まった「おもてなし規格認証」は、その成果のひとつ。評価基準はインターネットを活用した情報提供やクレジットカードの対応状況、施設の外国語表記などに重きを置いている。

確かに2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて「おもてなし」の重要性は高まる一方だ。しかし外国人観光客への対応だけを高品質にしても、必ずしも日本全体のサービス向上には直結しない。

鉱工業製品には経産省所管の日本工業規格(JIS)が存在し、JIS準拠を明示した製品・部品が国内産業の標準になっている。サービスをJIS法の対象に加える方法も考えられなくはない。しかし鉱工業製品よりはるかに多彩で、しかも目に見えず、品質を評価しにくい特有の難しさがあるサービス産業には、JIS方式の標準化が適当でない恐れがある。

日本品質管理学会など3団体が、消費者が不利益を被らないための最低限のルール整備に動き出したことを歓迎したい。まずは真のサービス品質とは何であるかを、個々の業界が真剣に考えなければならない。

(2016/11/16 05:00)

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