[ オピニオン ]
(2016/11/29 05:00)
訪日外国人の増加が続いている。ただ2020年に4000万人という政府目標の達成は、容易ではない。企業や地方自治体は、外国人客の誘因となる「ユニークメニュー」の策定に協力できないだろうか。
政府観光局によると、訪日外国人客の数は16年1―10月だけで15年実績の1973万人を突破。16年通年では2400万人が見込まれる。しかし日本旅行業協会の田川博弘己会長(JTB会長)は20年に4000万人という政府目標について「かなり難しい」と悲観的だ。
大きな理由としてはホテルの不足や空港・港湾などの制約があるという。また大規模な展示会場なども海外に比べて見劣りする。そうしたハードウエア面の問題は、行政が着実に解決していくしかない。ただ田川会長は同時に「外国人客に対するインセンティブを開発する必要がある」と訴える。これは重要な指摘である。
外国人客はなぜ急増したか。もともと日本には豊かな四季や伝統文化、食やアニメーションなどの魅力があり、査証の緩和と新興国の経済力向上が観光客獲得に結びついたとされる。しかし日本が、自らの魅力を増す努力は十分だったろうか。
日本旅行業協会による訪日外国人旅行についての提言の中に「ユニークメニューの活用」がある。具体的には博物館や美術館、あるいは歴史的建造物などの一部を、小規模なイベントや会食の場として提供するもの。“めったにない特別な経験”が誘客に貢献する。
一度限りの準備となると大変だが、前もって委託業者を決めておくなどしてメニュー化し、旅行代理店に勧誘を依頼すれば手間は軽減できる。わずかでも施設側の収入となり、認知度の向上も見込める。企業や自治体が所有する施設を活用することは、さほど難しくない。
欧米ならどんな町にでもあるこうしたユニークメニューが、日本にはほとんどないと田川会長はいう。外国人客の増減に一喜一憂するだけでなく、自ら可能なことに取り組むのが真の意味の観光立国だろう。
(2016/11/29 05:00)