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[ 科学技術・大学 ]
(2016/12/1 05:00)
慶応義塾大学理工学部物理情報工学科の牧英之准教授らは、炭素材料のグラフェンを使って、紫外から赤外までの広い波長帯域に使える光検出器を開発した。1個の検出器で幅広い帯域に対応できる素子はこれまでなかった。シリコン上に直接積めるため、次世代の低消費電力なシリコン光回路に搭載する検出器などに使える。
16日に東京・丸の内の東京国際フォーラムで開く「慶応科学技術展」(日刊工業新聞社後援)で発表する。
光検出器は、グラフェンに電極を取り付けただけの簡易な構造。小型で安価なうえ、シリコン上に高密度に集積できる。理論的には、現在の光回路向けの化合物半導体製の光検出器に比べ、同等以上の100ギガヘルツ(ギガは10億)超の高速で検出が可能。化合物半導体はシリコン上に集積しにくい課題があった。
作製したグラフェン光検出器に、紫外や可視、赤外の光を当てたところ、すべての波長帯域で光照射に伴う光電流と光電圧を検出した。
顕微鏡を使った高分解能の光検出実験により、検出のメカニズムも明らかになった。まずは、光通信やセンサー、分析機器、撮像素子などの用途に向けて5年後をめどに実用化を目指す。
現在の光検出器はシリコンや化合物半導体製で光通信や撮像素子などに使われている。だが、材料系により感度を持つ波長が異なるために、波長ごとに検出器を使い分ける必要があり、低コスト化や小型化などを阻んでいた。
牧准教授らは、グラフェンやカーボンナノチューブ製の高速の小型発光素子も開発しており、シリコン光回路上に発光素子と光検出器を搭載した光配線技術への応用もにらむ。半導体材料から炭素材料に置き換えることで、シリコン光回路を100分の1程度に小型化できるとみている。
(2016/12/1 05:00)
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