[ オピニオン ]
(2016/12/1 05:00)
米ゼネラル・エレクトリック(GE)と独シーメンスという製造業の巨頭が、金属積層造形技術の強化に動いている。両社は競うように金属3Dプリンターメーカーの買収を表明し、次世代モノづくり技術の主流の座をめざす戦略を打ち出した。日本勢も遅れてはならない。
GEは9月、スウェーデンとドイツの金属3Dプリンターメーカーの買収を発表。このうち独社の買収は断念したもようだが、実機メーカーを傘下に収めようとする姿勢は積層造形にかける本気度を感じさせる。GEはかつて、金属切削加工の中核技術である数値制御(NC)装置で日本のファナックと組み、自社は実質的に撤退した歴史がある。積層造形で、その失地回復を狙っているようだ。
シーメンスも8月に英国の金属3Dプリンターメーカーを買収した。同社はGEとは違い、NC装置やFA機器でファナックや三菱電機と世界的にシェアを競っている。ここに積層造形の技術が加わるわけだ。
かたや日本勢はどうか。先ごろ開催された日本国際工作機械見本市(JIMTOF)ではオークマやソディックが積層造形機を初出品。松浦機械製作所やDMG森精機、ヤマザキマザックという従来メーカーも機種を拡充するなどバリエーションは広がってきた。だがレーザー発振器や制御という積層造形の中核技術では依然、欧米に先行を許している。さらに用途開発となると、ジェットエンジンや医療機器を自社でもつ欧米2強の迫力に、日本勢は及ばない。
大量生産を柱とする従来型のモノづくりでは、工作機械と切削加工の優位性は今後も揺るがない。だが積層造形を使えば、これまで困難だった複雑な形状の製品や、IoT(モノのインターネット)技術と組みあわせた多品種少量生産など、新しいモノづくりの世界が開ける。
日本では、次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)で金属3Dプリンター開発が進んでいる。企業買収により開発を加速した欧米2強に対抗する上でも、用途開発を含めた日本勢の奮起が望まれる。
(2016/12/1 05:00)