１６年超モノづくり部品大賞／ものづくり生命文明機構 理事長賞－鈴木油脂工業

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  スクラブの溶解性をチェックする鈴木研究開発部長

溶解性粒子で詰まり解決

《業務用油汚れ手洗い洗剤　クイックメルティ》

【１８０度転換】

溶けないものから溶けるものへ―。鈴木油脂工業の業務用油汚れ手洗い洗剤に配合される新規スクラブ（粒子）の開発は、従来の性質を１８０度転換する方向で始まった。

鈴木油脂工業はゲル状工業用手洗い洗剤のパイオニア。顧客の要望に応じた製品開発を志向し、成分や性能のバリエーションを広げてきた。要望の一つとして浮かび上がったのが、多くの手洗い洗剤に配合されているスクラブによる排水管詰まりの解決だった。

指紋の中に入り込んだ油汚れを落とすには、スクラブ配合洗剤が求められる。だがスクラブの多くは水に溶けないポリエチレン製で、洗剤を大量に使う場所で排水管が詰まるなどの不都合も生じていた。

同社の鈴木和哉研究開発部長らは２０１４年秋から新規スクラブの開発に取りかかった。当初は生分解性樹脂製や天然由来のスクラブを考えた。「他製品に比べると速いが、それでも分解に３週間はかかる」（鈴木部長）ため、排水管詰まりの解決にはつながらない。

そこで手洗い後すぐに水に溶けるスクラブの開発に切り替えた。塩や片栗粉など水に溶けるものを手当たり次第に試した。水に溶けるものはいくらでもあるが、使用するまでの製品中でスクラブとして残り続ける安定性が難問だった。「水系の製品の中で水に溶けるものを存在させることはできないと思っていた」（同）という。

【安定性高める】

なんとか使用後５分程度で水に溶けるスクラブを開発できたが、商品の安定性を高めるための試験にも苦労した。高温や低温などさまざまな条件下で保管し、凍結を防ぎ品質を保つ工夫を施すなど安定性を高めた。

開発した溶解性スクラブを配合した洗剤「クイックメルティ」は、心地よく手洗いができるスクラブ効果を感じられるとともに、排水管詰まりなどの問題も解決できる。ユーザーだけでなく、同社製品を扱う商社からも「他社製品と差別化しやすい」と好評を得ている。

【環境負荷抑える】

さらに最近、従来の合成樹脂製スクラブが海洋を汚染し、生物などに影響を与えるマイクロプラスチック問題が世界的に浮上してきた。溶解性スクラブで環境負荷を抑えられるという利点もあるクイックメルティに注目が集まっている。

（大阪・花岡敬二）