[ オピニオン ]
(2016/12/2 05:00)
政府・与党の2017年度税制改正の議論が大詰めを迎えている。あまり目立たないが、今回の改正の柱のひとつに国際的な課税逃れの対策強化がある。制度の見直しそのものは必要だが、行き過ぎた対策が日本の企業行動の支障にならないよう配慮を望みたい。
企業活動のグローバル化とともに、極端に税率を低く抑えた国・地域の子会社などに所得を移し、税負担を不当に軽減する「タックスヘイブン」への対策が重要になってきた。特に近年、米国などの有力な多国籍企業が、複数の国の税制の有利な部分を組み合わせる形で運用する過度な課税回避(BEPS=税源浸食と利益移転)が問題視されている。
こうした望ましくない企業行動への対策は、ひとつの国だけでは不可能だ。経済協力開発機構(OECD)では日本がリードする形で、12年に中国やインドなど経済規模の大きな国をメンバーに加えた「BEPSプロジェクト」に着手。15年9月に最終報告書がまとまり、同プロジェクトを支持する各国が取り組む15の行動計画(アクション)が明記された。17年度は、これに伴う国内の制度改正が予定されている。
BEPS対策は多岐にわたるが、大原則は「価値を生んだ国・地域で納税すること」であり、多くの国が支持している。日本では経団連などが早い段階から議論に参加しており、その点で産業界にも異論はない。
ただ課税・非課税の判断は個別事案になることが多く、新たな制度そのものが企業の負担になりかねない。成熟した制度を持たない新興国が強引な法解釈で自国への納税を求めた場合、企業の本拠地のある国との二重課税を迫られるケースも懸念される。また複雑な税務申告は、中堅・中小企業の海外事業展開の足かせになる恐れもある。
日本企業にはBEPSを疑われるケースはほとんどないといわれる。国際合意に基づく税制は必要だが、それが日本勢の国際化を妨げるようでは困る。政府・与党は、その点を十分に考えてほしい。
(2016/12/2 05:00)