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[ 自動車・輸送機 ]
(2016/12/6 05:00)
IT・サービス業が参入
自動運転社会が現実味を帯びてきた。自動運転の勃興は、シェアリングや“つながる車”といった潮流と複雑に絡み合って、車のあり方を根底から覆そうとしている。新たな車が交通社会に利便をもたらす一方で、車業界はITやサービスなど異業種が入り交じる混戦となり、その変化のスピードは増す。日本の基幹産業の一つである車を取り巻く既存のビジネスモデルや制度は、変革を迫られている。
将来の絵、どう示す―ニーズ読み解き、技術獲得
【事故の責任】
究極の選択を迫られた時、誰を優先して救うのか―。3日、日本機械学会が開いた自動運転模擬裁判。対向車線から飛び出した自転車を自動運転車がはねて死亡させ、遺族が車メーカーを訴えた。
自動運転のAI(人工知能)は自転車を検知した瞬間、車速を落としたが、避けるには周囲の車を巻き込んでしまうため、ブレーキをかけながら直進してぶつかった。「周囲のリスクを下げるための方法を探し、(結果として事故を)避けられなかったことは欠陥とはいえない」(裁判官)。模擬裁判は被告のメーカーが勝訴した。
9月の1回目の模擬裁判では飛び出してきた自転車を避けようと車線変更した自動運転車が、ダンプカーに追突され乗員が死亡。遺族が車メーカーを訴えた。判決は「備えるべき安全性を欠いた」とメーカーが敗訴。1回目で「抽象的説明では勝てない」(近藤惠嗣弁護士)と証明されたため、詳細情報を積み上げて2回目に臨んだ。
【移動の道具】
自動運転が社会ニーズから生まれたのは間違いない。10兆円ともいわれる渋滞による経済損失を緩和し、高齢化に悩む地方の買い物弱者を救う。トラックの隊列走行はドライバー不足を解消する。
半面、事故が減ればコンビニの約1・6倍にのぼる国内9万軒の整備工場の経営が厳しさを増し、損害保険業界は変更を迫られる。
さらに「完全自動運転になれば所有の喜びではなく、車が移動の道具としてシェアリングされていく」と志賀俊之日産自動車副会長はみる。そうなれば車は安価な小型電気自動車(EV)で事足りるかもしれない。独ダイムラーはEV開発に今後1兆2000億円を投じる計画だ。
9月、経済産業省の産業構造審議会新産業構造部会。南場智子ディー・エヌ・エー(DeNA)会長が自動走行のプレゼンテーションをした。志賀副会長は「本来は自動車業界の人間が将来の絵を示すべきところ」と悔しさをにじませた。
トヨタ自動車は5月に、配車アプリケーションソフト大手の米ウーバーテクノロジーズへ出資を決定。しかしすでに15年には、楽天が米リフトに、ソフトバンクがアリババと共同で中国・トラヴィスにそれぞれ資本参加を表明している。ここにも産業構造の劇的変化が透ける。
【構造が変わる】
乗用車の世界販売に占める日系企業のシェアは約3割にのぼる。しかし世界の消費マインドや制度の変化を読み解かねば、シェア維持はままならない。サプライヤーを含めて自動運転の付加価値やリスクを見極め、機動的かつ国際的にM&A(合併・買収)やオープンイノベーションで技術を獲得するべきだ。
(2016/12/6 05:00)