[ オピニオン ]
(2016/12/8 05:00)
75年前のきょう未明、北太平洋上の空母を飛び立った日本の航空部隊がハワイの米艦隊を攻撃し、多大な戦果をあげた。日米は開戦を通告し、欧州中心の戦火は世界大戦へ拡大した。
歴史の上では対米最後通牒(つうちょう)の不手際など、解釈や意義づけの違いはあろう。ただ自らの劣勢を知る日本軍が奇襲に頼り、フランクリン・ルーズベルト大統領の「この攻撃を決して忘れない」という言葉に当時の米国民が奮い立った事実は動かない。「パールハーバー・アタック」は先の大戦を象徴する場面のひとつだ。
安倍晋三首相が現職首相として初めて真珠湾を訪ね、退任を控えたオバマ大統領と会談する。5月のオバマ氏の初の広島訪問と並び、かつて戦火を交えた両国が手を携えて世界の平和と繁栄を目指す。意義ある外交だ。
産業界のリーダーの中にも直接の戦争経験を持つ人は少なくなった。首脳同士による慰霊の演出に不満を持つことはなかろう。謝罪や許しではなく、ともに未来を語ることこそ真の意味での「終戦」になる。
大戦前、孤立主義の色彩が濃かった米国は、戦勝によって世界のリーダーの座を不動のものにした。保護主義に傾いている昨今の米国を、奮い立たせるような言葉はないものか。
(2016/12/8 05:00)