[ 機械 ]
(2017/1/5 05:00)
【名古屋】兼房は名城大学と共同で、ピストンリングなど自動車エンジン部品の駆動時の摩擦を最大10分の1に減らす加工ができる工具を開発した。タイリングと呼ぶ切削加工で部品の表面にディンプル(くぼみ)を付けて、摩擦を減らす。摩擦によるエネルギー損失を抑えられ、自動車の燃費向上に貢献できる。ディンプルの形状別に4種類の工具を近く投入し、手薄だった自動車業界を開拓する。
府省連携の国家プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一テーマ「革新的燃焼技術」の中で、摩擦によるエネルギー損失の低減を研究する宇佐美初彦名城大理工学部教授と共同開発した。自動車のアクセルを踏んだ時など、エンジンピストンの摩擦量が大きい場合に、低減効果が大きくなる。
開発した工具は先端に真円、三日月などの形状の刃先を施し、マシニングセンター(MC)に取り付けて使用する。工具を回転させながら側面を部品表面に押し当てる。
直径0・1ミリ―1・0ミリメートル、深さ1マイクロ―10マイクロメートル(マイクロは100万分の1)のディンプルを、タイルを敷き詰めるように広範囲に毎秒50―150個付けられる。バリが出にくい利点もある。
先端部の刃先で加工し、曲面に自由にディンプルを付けられる工具も用意した。発売する工具の価格は、顧客の利用状況に応じて決める。
兼房は木工用刃物が主力だが、需要の大幅な伸びが見込めず、自動車業界を開拓している。開発した工具は人工関節など医療分野にも提案する。人工股関節の接合部にディンプルを付けて摩耗を減らせば、耐用年数を伸ばせると見込む。
(2017/1/5 05:00)