[ オピニオン ]
(2017/1/11 05:00)
年を重ねたせいか、新年を迎えることの新鮮味が薄れたように感じる。やもめ暮らしの住まいでは、しめ飾りも年末の大掃除も省略していた。実家に戻って暮らすようになっても、そのズボラが直らない。
両親が元気だった頃には、年末に必ず餅をついていた。鏡餅に平餅、よもぎ餅、あんころ餅と順に作っていく。電気餅つき器ですませるようになっても、家族で餅を丸める作業が楽しかった。
その親も体が弱くなり、もち米やよもぎの手配や蒸す作業が負担になったという。のどに詰まらせるのが怖いので、老人に餅ばかり勧めることにも抵抗がある。スーパーが正月も開くようになって他の総菜が簡単に買えるせいもあり、たくさん用意しても食べきれなくなった。
出来合いの餅を買ってきてすませる代わりに、今年は少しばかりいい日本酒をそろえて正月を過ごした。ちょっともったいぶって一升瓶を木箱から出し、おとそ代わりに杯に注ぐ。
きょうは多くの地方で鏡開き。ただプラスチックに包まれた鏡餅にはいまだに慣れないし、槌(つち)で割ることもできずに味気なく感じる。最後の大吟醸の封を切って正月を締めくくろうと思う。旧年中のくさぐさを忘れるのには、餅より酒がうってつけだ。
(2017/1/11 05:00)