[ オピニオン ]
(2017/1/12 05:00)
「帰省子の投げてゆきたる一波紋」(藤崎美枝子)。帰郷したわが子が、都会に戻る姿を見送る複雑な感情を詠んだ歌だろうか。昔は船で往来することも多かった。水面(みなも)のかすかな揺れが、内なる心の微動を映す。
ジャズやコーヒー、ゴルフといった西洋文化の“玄関口”として知られる神戸港。かつて世界2位を誇ったコンテナ取扱数は1995年の阪神・淡路大震災後に低迷期に陥ったものの、現在は東京港に次ぐ規模となり、震災前の水準にまで回復した。
17日で震災から満22年。神戸は再び、以前の輝きを取り戻したように見える。復興のシンボルとして2009年にJR新長田駅前に設置された『鉄人28号』のモニュメントは昨年11月、原作漫画に近い色に塗り替えられて威厳を増した。
頑丈な鉄のロボットならぬ、繊細な“培養ロボット”。川崎重工業は昨年末、自社開発のロボットで培養した細胞を世界で初めて再生医療に用いたと発表した。神戸発祥の川重は今も市内に多くの拠点を置き、「医療産業都市・神戸」の一翼を担う。
震災を乗り越えた人々の強い心は共鳴し、高いうねりとなり、それが大きな波紋となって徐々に広がっていく。そんな港町の、あふれる活気を感じる。
(2017/1/12 05:00)