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(2017/1/18 05:00)
【得意な領域】
「ハードとソフトとデータが融合する分野は、日本が得意な領域」。2016年11月28日に開かれた官民連携による団体「インフラメンテナンス国民会議」の設立総会。会長に就任した冨山和彦経営共創基盤最高経営責任者(CEO)は、インフラ維持・管理分野の将来性に高い期待感を示した。
高度経済成長以降に整備されたインフラの老朽化が進んでいる。国土交通省によると、建設後50年以上経過した橋は13年度に全体の約18%。33年度には約67%に増える。
インフラ維持・管理の費用も増えるが、民間にはビジネスチャンス。IoT(モノのインターネット)やビッグデータなどを駆使すれば「建設関連だけではなく他産業の企業もマーケットとして期待できる」(竹末直樹三菱総合研究所主席研究員)。
【30年は持つ】
すでにインフラ維持・管理で高性能な技術の適用は始まっている。大林組はトンネルなどの補修用に、耐久性を向上し剥落を防ぐ工法を展開する。コンクリート劣化部を除去して厚さ8ミリメートルのセメントボードを施工。薄いが緻密な構造で塩分などの劣化因子を遮断する。「最低でも30年は持つ」(福井真男大林組生産技術本部技術第一部副部長)と自負する。
東京湾に架かるトラス構造の「東京ゲートブリッジ」。12年2月に開通したが、100年以上の供用が予定されている。
建設段階で耐久性を高める新しい技術や材料を投入。供用開始後は、橋の状況を検知するモニタリングシステムで管理する。変位計や加速度計など、50個以上の計測器で測定したデータを光ファイバーケーブルで転送。「異常を検知できればすぐに対応できる」(鈴木誠国交省東京港湾事務所整備第二課長)と長寿命化に力を注ぐ。
【今やらないと】
道路構造物の老朽化が進む首都高速道路は、17年度中にスマートインフラ管理システム「i―DREAMs」を運用する。道路構造物の設計から建設、維持・管理までの情報を統合し、点検や補修に生かす。
18年度には人工知能(AI)を導入。構造物の損傷状況を機械学習により判定し、適した補修・補強方法を示す。想定しているのは将来の技能者不足だ。「人が減る中、今やらないといけない」(永田佳文首都高速道路保全・交通部保全企画課長)と技術で技能者不足を補う。
インフラの維持・管理には、構造物の補強・補修工法などのハードと、構造物のデータを活用するソフトの両方が必要だ。IoTやAIなどが進化することでハードとソフトが融合し、より効率的な維持・管理が可能になる。ノウハウを蓄積できれば、海外でインフラの建設だけでなく維持・管理もパッケージ化して展開できる。
(編集委員・村山茂樹)
(2017/1/18 05:00)