[ 機械 ]
(2017/2/6 05:00)
オークマが長年追い求めてきた工作機械のあるべき姿。それは「材料を入れると、完成形にして出すブラックボックス」(家城淳常務)。その夢を実現させようというのが、複数の加工法を扱う複合加工機の枠を超え、ワークを完成するのに必要な工程すべてをこなす「超複合加工機」だ。
オークマは旋盤、マシニングセンター(MC)、研削盤と一通りの工作機械のラインアップをそろえ、それらを組み合わせた複合加工機も展開している。だが、既存の切削加工をいくら複合しても、焼き入れはまかなえない。ゆえに超複合加工機には「焼き入れの工程を入れるのが必要だった」(家城常務)。そこで目を付けたのがアディティブ・マニュファクチャリング(AM、金属積層造形)もできるレーザーで、部分精密焼き入れをする機能だ。
核となるレーザー部分の技術開発を進めたのは技術本部ソリューション開発センター。「工作機械の制御技術で品質のいいレーザーのコントロールを実現することに時間をさいた」と同センターの山本誠栄先端技術開発課主務は開発時を振り返る。特に「焼き入れが均一に入っているのを調べ、データを蓄積するのに苦労した」。
AMで加工するワークの強度を調べる際には、直径150ミリメートル、高さ70ミリメートルの試験用のワークをAMで止めどなく作り、それを短冊状に切り刻んで試験片を作成。どの断面でも同じ強度が出ていることを検証する試験を重ねた。
高精細のワークだと一つ作るのに要する時間は100時間以上。さらに、「金属工学や材料工学の面からの評価に時間がかかる」と石原洋成先端技術課課長は語る。「焼き入れた場所の評価の時間は、焼き入れ時間の500倍になる」。
こうしたさまざまな実験の繰り返しの末、超複合加工機の第1弾は完成した。切削ではできない複雑な成形ができ、焼き入れ工程を外に出す必要がないこの機種は、オークマが求める夢の機械実現への大きな節目になる。
(名古屋・江刈内雅史)
【製品プロフィル】
AMのほか、業界初となるレーザーでの部分精密焼き入れの機能も搭載した超複合加工機。5軸制御MC3機種と複合加工機2機種を展開する。ワークの載せ替えなしで切削、研削、AM、焼き入れ、コーティングまでこなし、劇的な工程集約を実現。必要な部分を精密焼き入れすることで、処理能力は飛躍的に向上し、変種変量生産に対応する。
(2017/2/6 05:00)